2013年1月23日水曜日

【映画】ランドオブザデッド



ジョージ・A・ロメロは偉大だ。
まずこれが言いたい。
ザックスナイダーがドーンオブザデッドをアンサンブルキャストで、しかも当時のアメリカの大量生産主義をショッピングモールというむちゃくちゃしびれる設定で描いてロメロもさぞ満足だったことだろう。しかしロメロが次にどう出るかは期待されていただろうしかなり困惑しただろう。しかしネタには困らなかったはずだ。そして重い腰を上げ20年ぶりにメガホンをとったのが今作ランドオブザデッドである。

あらすじ
近未来、ゾンビが地球上に蔓延するようになった世界。生き残った人々は、三方を川に囲まれた島に防御フェンスを敷いて町を築き、高層ビルに暮らす富裕層とスラムに住む貧民に別れて暮らしていた。
物資調達部隊の傭兵隊長ライリーは町を牛耳る権力者のカウフマンから、ライリーの部下であるチョロが装甲車デッド・リコニング号を乗っ取り、町の爆破を予告したと伝えられる。ライリーは北へ向かうための脱出用の車を条件としてチョロの殺害に向かうが、同じ頃にゾンビ達が町を目指して川を渡りつつあった。(引用元wikipedia)

ゾンビ映画において最も重要であるのは血糊の量でも金髪女の乳でもなくその時代の社会情勢をいかに反映させられるかであると私は思っている。ロメロは間違いなくそのスペシャリストでありその礎を作り上げたのもロメロ本人だ。それも何百という死体で築き上げた定礎だ。Night of the living deadのアパルトヘイト政策批判でそれはもはや完成しており、またランドオブザデッドでは期待通り気持ちいいくらいにアメリカを批判している。

三角州のような三方を川に囲まれたフェンスだらけの島とはもちろんアメリカをさし、富裕層とスラムの対比は間違いなく現在のアメリカを指す。リーマンショックは記憶に新しいがアメリカは今大恐慌を迎えようとしている。だが間違いなくそれに乗じて得をするような人間も少数おり、それが高層ビルにあたかも今までと変わらないかのような暮らしをするブルジョアジーであり、その高層ビルは貿易センタービルなのではないか。
その足元ではスラムの住人たちがガラクタを売って生活したり自動車を整備していたりまるでカリフォルニアのチノみたいな暮らしをしている。また年寄りが抗生物質が手に入らず困っているあたり、金がないと救急車が呼べないところを反映させている。
また主人公やチョロ達はU.S.NAVYや軍隊を表しているのだろう。彼らは島には留まらず、よその世界へ行って物資を調達する。そうそれはまるでイラクに石油を奪いに行くアメリカであり、無差別に殺され憤怒して川を渡るのははるばる海を渡り旅客機でビルに突っ込んだまぎれもない彼らである。
ゾンビもついに水に入れるようになってしまった。28週後の走るゾンビこそ衝撃だったが、ブードゥー教を元に、死者を蘇らせしかし当時土葬であったため死体は腐っているだろうという判断から走れないゾンビもついには泳いでしまった。しまいには銃を撃つ。ダイアリーオブザデッドに至ってはゾンビ馬を乗りこなし飼い慣らそうとしてるんだからもはやゾンビとは何なのかわからなくなってくる。バイオハザードなんかで描かれるゾンビは当初は忠実に再現していただろうがだんだん職種のお化けみたいになっていくもんだから途中から興味がなくなった。

イラク扮するゾンビが高層ビルを襲い、ブルーカラーやスラムの住人は逃げる人間もいれば戦う人間もいて、主人公たちは外にいる。これはアメリカの最悪の結末であり、この映画は今の共産政党のやり方に警笛を鳴らす。
ありえそうなもんだからやっぱり、ジョージ・A・ロメロは偉大である。

2013年1月16日水曜日

【映画】シドアンドナンシー



セックスピストルズのマスコット的キャラクターでもあり後のパンクスに絶大な影響を与えたシドビシャスの壮絶な人生と最愛のナンシーとの特殊な恋物語を描いた1986年公開のイギリス映画。
シドビシャスといえば過激なライブ演奏とファッションアイコンとして名高いがゲイリーオールドマンが見事に演じている。その名演からかシドビシャスを美化しすぎだという意見も多く出ている。しかしゲイリーの演技は見事なものであったしこの作品を通じてドラキュラや、レオンでの悪徳公務員など、エキセントリックな役をやるならば彼の右に出る者はいないというまでにのし上がった大きなきっかけとなる作品であったし、美化しすぎていることはないと考える。
シドアンドナンシーにおいて最も感動したのが我らが日本の巨匠黒澤明監督による三船敏郎主演の蜘蛛巣城における撮影技法が使われていたことだ。蜘蛛巣城では三船演じる将軍が謀反により弓矢の雨を浴びるシーンがそれであるが、そこでは実際には距離があるのに縦に撮ることによって至近距離に弓矢が当たっているように見える。今作でも二人が愛し合うすぐ横にゴミや物が大量に落ちてくるというシーンで使われていた。ここではおそらく社会からは完全に離脱し二人だけでやりぬくという意味が込められているのだろう。実際二人はドラッグにおぼれナンシーは悲しい結末になるのだが...
また別のシーンではスローモーションとともにシンセサイザーをSEに使うなど80年代らしい撮り方も。
しかしこの映画で最も批判すべきなのはナンシーの配役ミスにある。金切り声で喚きなぜかスローモーションみたいなちんたらした話し方で見る者の神経をとがらせる。監督の悪意でああなったのか、高校時代いじめっ子の名前がナンシーだったからなのかはわからないが再び見る気を失せさせる容貌(完全に北斗昌)と不協和音により質を下げている。
しかし世間ではこの映画によって再びパンクブームが到来するなどロンドンパンクの商業的な担い手ともなっているので悪くは言えない。ただ個人的にクロエなんとかはブラックベリー賞ものだった。

バウンティハンター(ブランド)でも商品化されていた蛇のうろこみたいなスタッズベルトやクールな革ジャンがたくさん出ていたので購入意欲がわきました。

2013年1月14日月曜日

【映画】SUPER8




スピルバーグが係わったと聞いて期待と不安が同時に来た。宇宙戦争みたいに何のかなっていうのと、内臓はでるのかなっていう期待である。結果はと言えばどちらも裏切られた
79年アメリカのド田舎で映画製作にいそしむスタンドバイミーテイストのちびっ子たちがUSAFが握るトップシークレットを目撃してしまう。(冒頭の列車事故はもういいよってくらいド派手にやってくれた。)軍はそれをひた隠しにし、航空部品の輸送だと貫き通す。事故を見てしまったスタンドバイミーテイストのキッズ達は絶好の機会だと映画にこの事故を取り込むが徐々に巻き込まれていく。

行ってしまえば序盤30分で先の60分がもう読めるある意味古典芸能的なSF作品である。自分で自分の作品のシークエンスを出すというスピルバーグのおちゃめっプリに笑うコメディ映画。
そろそろだれかエイリアンが出てきた瞬間興ざめする現象に名前を付けていい。あとなんで毎回エイリアンは魚介系なんだ。そういう意味ではHRギーガーの『エイリアン』は大傑作だ。あそこまでおぞましいこれぞ宇宙人っていうデザインは他とない。別にプロメテウスを評価してるわけではない。

ただSUPER8の良かった点は古典的な展開に沿っていながらも近年の映像技術や演出をまんべんなく取り込んで2011ねんまでのSFのおさらいみたいな出来上がりが評価に値する。
これだけテンポラリーにおんなじようなSFをブっ込んでくるあたり、スピルバーグはSF界のロメロなのかもしれない。

【映画】風の谷のナウシカ



日本国民であれば風の谷のナウシカを見ずして日本を語るべからずという言葉がある。ないけど。それくらいもはや観てて当たり前であるはずの不屈の名作をあろうことに先日初めて見た。名高い作品だけあってシナリオだけ聞いてもなんだかおもしろそうだと興味をそそる。逆になぜ今まで見てこずにクローバーフィールドとかメカニックとかあほみたいな映画に時間を割いてきたのだろうと恥じたくなる。
もはやあらすじなど言う必要などないので言わないが、よくある産業革命か自然信仰かの善悪二元論が大きなテーマであり、我々にとってはタブーといえる汚染が重要なテーマとなっている。敵の軍がいかにもドイツ軍を思わせる風貌だったり露骨に批判を混ぜたような部分があって、もののけ姫とトトロしか見たことのない私にはジブリってこんなプロパガンダ的でいいのかい?!っていうのが正直な感想であり、3.11を経験した我々にとって再び見るべき映画だと感じた。
芸術家は作品に命を吹き込みメッセージを組み込む仕事だと思っている。そういう意味でナウシカは当時の駿の心情をもろに組み込めていると思うし、逆にいえば近年のジブリは平和ボケにやられちまっている。駿じゃないからいけないとは言わないがとんでもなくポリティカルな作品をブっ込んでしまってもいいのでは?帝国軍の住む宮殿に妹を殺された少年が戦闘機を突っ込ませ、、、

あなどるげからずジブリ。

最後まで疑問だったのは、なぜ男性は皆胸に魚肉ソーセージを六本忍ばせていたのでしょうか。もしかして6=悪魔崇拝的なメッセージかつセクシャリティなイメージということでしょうか。

【映画】ジョニーは戦場へいった




ここまでおぞましい戦争映画を未だかつてみたことはない。フルメタルジャケットが恐ろしきリアルな残虐性を描いたとしてもそれはキューブリックの頭の中での空想にしかすぎない。なにが恐ろしいって、これは現実にあったことだから。

第一次世界大戦が始まりアメリカが参戦した。当然苦難の長期戦となったアメリカ軍は兵力が足りず若者を徴兵することとなる。片田舎でごく普通の生活をしていた青年ジョーボナムもこの地獄へと案内される。
病室の一角、ジョーはベッドに横になっていた。
何か言葉を発しようとも手を動かそうも、どうにもならない。
ジョーは爆弾により手も足も顔もすべてを失った。あるのは皮膚の感覚と、生殖器のみ。身体中の感覚を駆使して探ってみると顎はなく目も耳も何もなかった。
生きる意味とは。この世の地獄を味わうも、死なせてもらえず肉の塊となり生きる事を強いられる。神はなんと無慈悲な事か。
ジョーは病室の中で過去を回想する。頬に感じる暖かみ、太陽の光だ。思えば父はいつも釣竿を作ってくれた。あの木漏れ日の中で釣りをした日々。
ジョーには許嫁がいた。戦争に行く前夜二人は抱き合った。女は涙したが、次の日彼は記者に乗った。戦場では異臭のするドイツ兵を埋めていた。そうだ、そのとき被曝したのだ。父は言った何かあればモールス信号を使えと。そうだ、モールス信号を使えばいい。彼はわずかに動かせる頭でモールス信号を看護師に送った。SOSと。
部屋に長官が呼ばれジョーは自分を殺せと哀願する。
しかし長官は望みを受け入れなかった。
ジョーは暗い部屋の隅に追いやられ、一人S..O...S...と。
パラノーマルアクティビティーなんかよりもよっぽど恐ろしくあのかの有名な駄作ミストよりもよっぽど胸糞悪い。ただ決定的な違いはこれが現実であるということだ。

【映画】パルプフィクション 



この映画は名作だとか90年代の名映画とか言われるが、それはタランティーノのテイストを理解していてかつ、映画を吟味して人生の糧にするような映画評論家のような人間にはそれはまったくもって理解できないであろうし、この映画の120分は退屈なものであろう。

映画評論家のような、この映画何が面白いの?ひねりもないしストーリーもないし評価される意味がわからないというまっすぐな姿勢は評価する。しかしとりあえず肩の力を抜いてほしい。例えるならば我々は空腹を満たす時、ただ漠然と空腹を満たすのか、あるいは金を払って高級な料理を食べるのか、それに似ている。スタンドバイミーが好きな映画評論家達は、この映画は出汁も効いてないし味も濃いし、何がおいしいの?と言ってるようなものである。そしてパルプフィクションを例えるならばちょうど劇中に登場するチーズバーガーロイヤルの食品サンプルといったところか。添加物たっぷりで、何の教養もなく、ファストであり、カロリーたっぷりなチーズバーガーだ。それでいてフィクションである。パルプフィクションとは三文小説のことである。



映画産業が大儲け、ハリウッドには黒い影が立ち込める私が大好きな80年代ロサンゼルス、二人の雇われヒットマンは今日も仕事をこなす。手慣れた手つきで冗談を言い合いながらいつも通り聖書の一節を引用して標的を始末(take care)していた。
その次のカットでは二人はなぜかビーチバレーにいそしむ大学生みたいな恰好でボスの元を訪れる。
ここに至るまで二人には、いやロサンゼルスでは様々なタランティーノ的珍事件が多発していた。

ボスはというと自分の育てているボクサーを試合で勝たせるため敵ボクサーであるブッチに賄賂を渡し負け試合をするよう命ずるが裏切られた果てにブッチとともにカマ野郎に掘られプライドをズタズタにされてキレる。ブッチに対してはプライドを捨てろって言ったのに。

他にも、間違えて敵の子分の頭を吹っ飛ばしてタランティーノの家に助けを求めにいったり、朝飯をダイナーで食ってたら冒頭のゴロツキの強盗とはち合わせたりと全体的にしょうもない

私は映画を面白いと感じさせる秘訣などないと信じている。別にストーリーが通ってたって面白いとは限らないし金がかかっててもそれだけリスクは生じる。絵画だって面白いと感じたものが面白い。デューラーだってボッティチェリだって面白いが、バンクシーだっていい。それらに共通点なんてないしあるとすれば平面ってことくらいだろう。映画に至っても1800円払って平面のスクリーンの上にフィルムから出た映像を眺めるうえでは同じだ。2001年宇宙の旅や荒野のガンマンも面白いがパルプフィクションは単純に面白いのだ。
一人ひとりのセリフや言い回し、訛りから性格まで徹底されている。表情も面白い。食事のシーンや場所のチョイスも考え抜かれてて素晴らしい。気の短い端的な考えしかできないセクシーテールの適当男、ヒットマンでありながらも哲学的でありまた神を信じ足を洗うことを考えているアフロアメリカン、不良上がりのプライドを捨てることなどさらさら考えていないプロボクサー。肩書きだけでも十分面白い。

Does he look like a bitch!?
このセリフは映画を見る前から知っていた。ブラックメタルのSEかなんかで使われていたしよそでもよく聞くので、初めて映画で聞いたときは相当しびれた。ぜひ使いたいね。