2013年3月30日土曜日

【映画】アルカトラズからの脱出

サンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ島。そこには鉄壁の牢獄「アルカトラズ刑務所」があった。別の個所からスイッチを押さなければ開かない鉄格子や、一日に12回ある点呼、監視の目は三人に一人など脱出がいかに不可能かを物語る。そこに入所してきた頭脳優秀な主人公フランク・モリス(クリント・イーストウッド)は脱獄の方法を考えていたが、ある日通気口から外へ出られるという話を聞き、独房の小さい通気口への入り口を大きくしてそこから独房の外へ出て、脱出する手段を思いつく。彼は仲間を誘い、色々な障害をクリアし、それまで絶対に不可能といわれた脱獄へと挑戦する。

ここまで読んだだけでも日本人なら誰しもショーシャンクやんと言うだろうが、こちらは1979年公開であり、ショーシャンクのほうは舞台をオハイオに移して説教じみたストーリーとお涙を織り交ぜた脱獄。こっちは政府に対するアンチテーゼみたいなものを感じる。囚人に対する気分次第で行われる人権を無視した行為、アルカトラズは絶対だという慢心から起きた崩壊(事実一年後に閉鎖することとなった)、またこの物語が事実であるという強烈な裏付けなど非常に面白いエッセンスが感じられショーシャンクみたいな高校生が映画通だと勘違いしてしまうような安直なつくりではないがベースとしては同じ。ちなみに私もショーシャンクは大好き。


この世に絶対は存在しない。絶対神だとか絶体絶命だとか言葉としては多く存在するが、いかなることにも穴があり、可能性が存在する。絶対勝てないといわれたスパルタカスの戦いや絶対大丈夫と言って妊娠したり絶対と書かれた選択肢は大抵間違いだ。絶対という言葉に絶大な安心感を感じてしまうのが人間の弱い部分かもしれない。アルカトラズの場合もまさにそうであり、周りは潮の流れが速く陸まで1マイル、牢獄は鉄壁で誰も出ることはできないと高をくくっていた。しかし海に周りを囲まれていれば鉄はさびるのは当たり前だし錆びるのは時間の問題だ。その盲点に誰よりも早く気づき行動したのがイーストウッドおじいちゃんであり、それは結果として絶対を打ち破ることとなる。


囚人飯とはレストランや食堂でクソまずいミールを提供されたときに罵倒する言葉であるが、ここで見る囚人飯はどうやらそこまでひどいものではなさそうだ。最近は牢獄も食事がちゃんとしたものになってきて、お金がないホームレスの方たちは冬になるとわざと投獄されて暖も取れて食事もできる刑務所に自ずから行くそうだ。ちなみに私がよく好きで食べに行くラーメン二郎は囚人飯はおろか残飯と称される。


絵は私のすべてだと語っていた老人が絵を取り上げられたシーンはとても印象的だった。その後老人は作業中手斧で絵をかくための右手の指を切り落としてしまう。フランクに胸の中に咲く花を渡して。自由というのは最も尊重されるべきものでありたとえ牢屋であってもそれは誰も侵害してはならないのだと感じた。TPPで著作の言論統制について騒がれているがそこに政府が介入すればオタクの怒りは行動へと変わるだろう。彼らの原動力であり私利私欲で生きている彼らのすべてが奪われれば暴走するのは時間の問題だ。


不満としては見事脱出したもののラストが呆気なさ過ぎて感動がない。脱獄しましたーいーすとうっどじいさんいませんー探すけどいないー菊の花落ちてるーチクショウ!みたいな流れなのだがほんと呆気ない。その後テロップで実際の話を映して終わり。当時の作風とかもあるんだろうが、脱獄したらまず外の空気をいっぱい吸う」とか、イーストウッド爺さんがその後どっかのカフェでエスプレッソをすすってる様子を映すとか、そういうのを欲した。
しかし名作であることは間違いないし、様々な作品のルーツを感じる良作。

2013年3月27日水曜日

【映画】ディアフランキー

ジャケを変えてほしいってのが正直なところ。内容は非常にいいのでもったいない。


耳の不自由なフランキーは船で航海中の父に手紙を出し続けているが返事は実は母親が書いていて、父親は離婚してどこかにいた。しかしある時手紙を出していた船が上陸すると聞き困る母親。一時的に父親になってくれる人を探しフランキーに嘘をつき続ける。


ザックスナイダーの300でThis is spartaaaaaaa!!!とかいってたジェラルドバトラーがすげえいい父ちゃんで出てる。時系列的にはこっちが先だけど。
ラストの下りは予想外でまさかの大泣き。フランキーの演技も自然だし、母の子に対する全力の愛みたいなのがしっかり描かれてる。

劇中出てくるフィッシュアンドチップスが超おいしそうでぜひ映画飯として作りたいところ。

なんか英語がどっかの訛りみたいに聞こえるのがちょっと気になる。
しかし泣けます。

【映画】ライフアクアティック

ダージリン急行で一躍有名になり、今年の頭にはムーンライズキングダムを公開したウェスアンダーソン監督によるコメディ。
ジャンルはコメディだけどそれはもはやウェスアンダーソン的なものであってコメディというのは語弊がある。


ストーリーは簡素なもので、海洋冒険家として世界的名声を得てきたスティーブ・ズィスーと彼の仲間たちがドキュメンタリー映画を撮りに海へと出かける。しかし自分は隠し子だと名乗る青年が現れ彼も交えて航海の旅へと出る。海賊に出くわしたり出版社の女が元に親子げんかが起きたり、、、
 
 
とにかく全体を通してかわいくてマヌケ。あいかわらず小物にも力を入れていて欲しくなるものばかりだし、船員がかぶってる赤い帽子もみんなちょっとづつ違って面白い。ダージリン急行では緑がメインカラーで、ムーンライズキングダムでは黄色がメインカラーだったけど、ライフアクアティックではやっぱり海ってことでブルーがメインカラー。内装だったりファッションだったりがブルーで非常にオサレ。最後に全員で乗ってるサブマリンはイエローなのはビートルズが好きなのでしょうか。
謎に銃撃戦が結構出てくるけど緊迫感など皆無。おまけにハンドガンなのに弾が無限に出てくるのはなんで?なんて疑問は禁句である。なぜならこれは学校の劇みたいなもんだから。もしも学校の劇を名優が本気でやってたら面白くない?そんなノリの映画であるし、我々も入りこむというよりは舞台の前で椅子に座ってみているような気分にさせる。
 
ダージリン急行が面白すぎたせいでこっちはちょっとインパクトに欠けるかなって感じ。でも出てる俳優さんはダージリン急行のインド人の車掌さんだったり最初に乗り遅れたおじさんだったり三人兄弟のお母さんだったりあまり変わらないから問題なす。スパイダーマンでグリーンゴブリンを演じていたウィレムデフォーがちっさいおっさん役で出ててなんかおもしろい。ついこないだアンチクライストを見たのでギャップが...笑
 
 
裏も表もないし批判もないしエロスもラブもないけど心が春を迎えるようなそんな映画。
ボンヴォヤージ!

2013年3月18日月曜日

【映画】スナッチ




ダイアモンドをめぐる男たちの争いと裏ボクシングの駆け引きが複雑に交差し最後は一つにまとまる群像劇。監督・脚本は「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」のガイ・リッチー。ブラピとデルトロとジェイソンステイサムが出てる時点でもう面白いのは間違いないのだが(好きな映画の半分はブラピ出てる)なんとあの運び屋やったり殺し屋やったりするジェイソンステイサムが一切こぶしを上げない!苦い顔してポケットに手を突っ込んでるだけ!いつ上裸になって暴れまくるのか心待ちにしていたのだが最後までロンドンの悪天候みたいな表情で何もせずおわる。無駄ソンステイサム使いだ間違いなく。
しかしジェイソンステイサムをうまく使えてなかろうがこの映画は間違いなく面白い。
まずキャラクターが全員むちゃくちゃ濃い。

ターキッシュ(ステイサム)
裏ボクシングのプロモーター。ミルクが好き。主人公ではあるがあまり目立ってはいないかな。一応ターキッシュの語り口調がナレーターとして話は進む。

ミッキー(ブラピ)
パイキーというイギリスの浮浪者や旅行者であり、ずる賢く、とんでもない訛りで何言ってんのかよくわからないが(ドッグをダグと呼んだりする)、素手ボクシングの腕はピカイチ。ほぼ主人公。

トミー(スチーブングレアム)
ターキッシュの相棒であり弾のないリボルバーを持ち歩くタマのないやつ。

フランキーフォーフィンガー(デルトロ)
ラビの格好で86カラットのダイヤを盗む。重度のギャンブル中毒で指を詰められたことからその名がつく。ちなみに映画21gでも異国人だったしデルトロはいつまでたっても差別的な役をやらされる。

ソル(レニージェームス)
宝石鑑定をやっていたがロシア人のうまい話に乗せられてでかい山にのり痛い目にあう。親分気質で結構うまくやりそうだが結構アホ。

ボリス(レイドセルベッシア)
元KGBであり弾が当たらないと言われるためボリスザブレイドと呼ばれる。ロシア訛りがひどく、また常にナタを持ち歩いている。

アビー(デニスファリーナ)
宝石商の男。ダイヤを求めていた事の発端の男。NYで大物面しているやつだがこのメンバーの中では一番血の匂いがしない男。金のネックレスをつけイギリスを嫌う。とか言いながら4往復位する。イギリスに対してフィッシュアンドチップスと紅茶と悪天候しかない国っていうシーンが感動。

トニー (ヴィニー・ジョーンズ)
冷酷なフランス人。六発の弾丸を食らっても死なないし肝の据わりっぷりが尋常じゃないがあっけなく死ぬ。情報屋に対する尋問がすばらしい。

ブリック・トップ (アラン・フォード)
悪の親玉でありノミ屋、裏ボクシングの元締め。気に食わないやつは汚い言葉と弾丸で黙らせる。死体を豚に食わせるまでの工程を説明するシーンは秀逸。悪人らしい最期を遂げる。


上記のようにキャラクター一人一人が個性的でありGTA的。なんかしら誰もが特徴があって、ちょうど私のドツボだったわけだ。脇役にもちゃんと個性があって色とりどりなメンバーがうれしい。キャラクターは多くて最初混乱するが、各々しゃべり方であったり特徴が異なるので、後半はすんなり話に入れる。思ったのは女性キャラを入れても面白かったかもしれない。冷酷なフランス人トニーとかは女でもよかった。


キャラだけじゃなくストーリーもGTA的で面白かった。話のテンポもよく見ていてだれることはない。終わり方もすっきりするし、なにより曲が最高にクール。
付け加えるのであれば場所がどこか混乱するっていうのとすべての人間がからむようにしたら面白かった。例えばアビーとブリックが知り合いだったりとか。余計話混乱するか?
話が混乱するとか難しいなんてマルホランドドライブを一回見てしまえば、いかなる映画も単調に見えるのだがあれを見ている人間はそうそういないしベクトルが違うから責めはしないが他の評価を見る限り複雑という回答が結構多い。
しかし何か面白い映画ない?と言われたら進んでお勧めしたくなる、そんな映画。


犬が主役らしいがあまり絡んでなくて残念。




2013年3月14日木曜日

【映画】REC2




前作RECでメディロス(自称少女垂れ乳ヤマンバ)に引きづり込まれ誰もいなくなってthe ENDとなった二時間後から話は始まる。あの悪魔が住まう建物に特殊部隊と健康省の博士が突入することとなった。二時間前にはゾンビがうじゃうじゃいたのが嘘のように建物の内部は静まりかえっている。目当ては最上階の例の部屋。話が進むうちに明らかになる健康省の男の正体、ヴァチカンから直々に命令が下っていた極秘任務の内容とは、そして前作で死んだはずのアンヘラが,,,,

正直私的には前作よりも恐怖度は増していたしエクソシスト的な話の流れもそれはそれで面白かったので好きなのだが世間的にはあまり評価は高くないようだ。低予算でヒット→パート2作りました=大抵の場合つまらないのだが、こちらは2もあって完成といった感じ。
前作が儲かったのか画質が心なしか向上してる。
間違えて消防士の頭ブチ抜いたりメディロスの血を燃やしてダメにしちゃったりちょっとバカっぽいところが多々あるがある意味そこもリアルでよろしい。個人的には最初のゾンビとの遭遇シーンがむちゃくちゃドツボ。スペインの歌謡曲をバックに襲いかかるシーンはその手の映画が好きな人ならたまらないはず。だからかPVもこのシーンが使われている。http://youtu.be/ifmFMfcg7VE

前作でダイアリーオブザデッド的な流れを期待して2を見た人はなぜかエミリーローズ的なノリに許せなかったのかもしれないがどちらも好きな私としては非常によかった。ただ問題は言うことがたいしてないということだ。

2013年3月11日月曜日

【映画】ヴィドック




1830年7月24日、パリ。街には国民的英雄ヴィドックの死を伝える新聞の見出しがあふれていた。もとは華麗な大泥棒だったヴィドック。しかし、脱獄を繰り返しているうち、その腕を買われて警察の密偵を仰せつかり、後に世界初の私立探偵事務所を設立したパリっ子憧れのヒーロー。悲しみに暮れるヴィドックの相棒ニミエの前に現れたエチエンヌと名乗る男。彼はヴィドックから伝記執筆の依頼を受けた作家で、一緒にヴィドック謎の死の真相を突き止めようと持ちかける。さっそく二人はヴィドックが最後に調べていた事件を洗い直すのだったが……。


レミゼラブルとはちがうフランス革命時の殺人事件のお話。
権力者たちが雷による怪死で三人もなくなるという事件と名探偵ヴィドックの死の真相を探るのがテーマとなっておりラストはなかなか読めない完成されたストーリーだった。

この作品で最も称賛すべきは映像美。フィルムを使わずデルタルカメラを使用したということで独特の平面的な画面が味わえる。まるで絵画の連続のようなカットである。多分デジカメだから奥行きがない。
斬新だが、あまりいいとは言えない。それはリンチのインランドエンパイアでも明らかだ。
アップが多いのもデジカメのせいなのか目が疲れる場面が多くあった。
カメラワークも独特で、フランス映画だからというわけではなくヴィドックそのものが独特だ。
曲線的なデザインがゴシックの絵画のようでもあり、バロックのような鮮やかなデザインなど視覚に訴える映画だ。一方でヒョウ柄の馬車とか緑のコートとか現代的な要素もある。
特にレミゼラブルも出てくる風俗街のデザインが素晴らしい。機会じかけの館がブリューゲルのお下劣版みたいでお下品だけどデザイナブルでとてもよい。

類似する作品がない個性的な作品だが一見の価値あり。

アメリカのジョーク画像でヴィドックは撮ってからインスタグラムで加工したみたいなのがあったけどまさにそんなかんじ。

2013年3月10日日曜日

【映画】シティオブゴッド



 1960年代後半、ブラジル・リオデジャネイロの貧民街“シティ・オブ・ゴッド”では銃による強盗や殺人が絶え間なく続いていた。そこでは3人のチンピラ少年が幅を利かせている。ギャングに憧れる幼い少年リトル・ダイスは彼らとともにモーテル襲撃に加わり、そこで初めての人殺しを経験すると、そのまま行方をくらました。一方、3人組の一人を兄に持つ少年ブスカペは事件現場で取材記者を目にしてカメラマンを夢見るようになる。70年代、名をリトル・ゼと改めた少年リトル・ダイスは、“リオ最強のワル”となって街に舞い戻ってきた…。


実話ベースのマフィア喜劇。
テーマは正直者は馬鹿をみるか?
腐敗と銃と大麻がのさばる神の街。そこでは悪に手を染める事でしか生き延びる術はなかった。真面目に生きようとすれば盗まれ、町全体が悪事に加担し密告もしない。暴力が起きても誰も何も見ていないという。自分の目の前で起きていてもだ。
貧困と暴力は硬く結び合い、いかなる国でもいかなる時代でも引き離す事は出来ない。真面目に生きることは美徳ではないのだ。
スラムドッグミリオネアなんかも同じような街並みが連なり彼らもまたドラッグを売って金を物にしていた。

しかし主人公のブスタペは銃は好まずカメラマンの道を目指す。かつて共にサッカーをした仲間は早々に悪に手を染め、地位と金を手にしていく。彼だけがいつまでも真面目でチェリーボーイだった。一度は悪事をしようと試みるが、ことごとく彼の周りには善がまとわりつき、悪事を働く事ができない。
まさにシンクロニシティ。こちらがトゲを出せば、相手もそれなりのやり方でくる。しかし善を出せば向こうもキチガイじゃない限り善で迎える 。
正しい生き方とは?正解はない。

幸福は人によって感じ方も感じるポイントも違う。金があふれれば満たされる人間もいる。食事をする、ゲームを買う、サッカーをする、誰かに手を差し伸べる、今日を生き延びる。JSミルは質的功利主義を掲げ「満足した豚よりも飢えた人間」が良いとした。一方でベンサムは量的功利主義を掲げこれを批判した。また幸福論でアランは「幸福だから笑うのではない、笑うから幸福なのだ」と説く。幸福の尺度とは環境、生き方で大きく変わるだろう。一概に誰しもを満たす物など存在しない。この腐敗と大麻に満ち溢れた神の町に幸福、あるいは明日は存在するのか?マリファナでガンギマリした偽りの幸福ではなく真の幸福はあるのだろうか。俺が今どんなに考えようがユビキタスを最大限活用して調べようがリオデジャネイロのスラムに幸福があるかは分からない。ブラジル人になってスラム生まれじゃないとそれはわからないだろう。
しかしただ一つ言えることは彼らは我々よりも間違いなく生きるために必死である。
日本じゃ公民館でDSやってるような頭でっかちのガキンチョと同い年くらいの子が銃で大人を撃ち殺す。それも毎日のように。絶望。この平和な国日本でそんなことがあれば絶望して自殺する奴が出てくるだろう。


子供が子供を殺したり残虐なのは勿論なのだか、全体を通して話が回想なのとテンポラリーに話が進みまた音楽もラテンリズムで青春映画のようなおかげで、そこまでナーバスになる映画では無い。
ラストシーンの悪は一生途絶えないことを表すカットが最初から今までをループしてて絶望的だが面白い。
この国がよくなるためには子供が変われば良いわけでも、大人が変われば良いわけでも、制度でも国でもない。もはや神の街では悪が根付き、これが生きる術。それは悪ではなく常識であり、おそれるべきは事実ということだ。


服がみんなスラムな感じでグッド。サッカーのユニフォームにウージーってのはマジで極悪に見えるね。下手に武装してるよりよっぽど怖いわ。
あとマックスペイン要素満載でロックスターは確実にこれ見てるだろうなと思いました。
 今じゃあ装甲車に金持ちを乗せてスラム街をサファリパークみたいに巡るツアーがあるらしい。糞だな。


【映画】デイ・オブ・ザ・デッド


ある日、コロラドの田舎町で風邪のような症状の伝染病が流行し始めた。そこに軍が現れ、「演習」と称して街を全面封鎖する。この田舎町の出身であるサラ=クロス伍長は、演習へ参加するために部下たちと共にやってきていた。
部下のバッドを伴って実家へ向かったサラは伝染病に感染していた母親を病院へ連れていくが、そこは感染者でごった返していた。すると突然、感染者たちは一斉にゾンビへ変貌し、人間を襲い始める。瞬く間に病院は、ゾンビの巣窟と化した。
倉庫へ逃げ込んだサラたちは、病院からの脱出を試みる。


ロメロの死霊のえじきのリメイク。しかしロメロの思いは一切残っていない。原作無視というやつ。
まずゾンビの三大原則である「動きが遅い、頭撃つと死ぬ、かまれると感染」の一個目を無視。ぴょんぴょん跳ね回るし天井を這ったりする。ゾンビは死んで体は腐り果て、しかし突然変異で動き出すのだから、走ったら腐った体がバラバラになってしまうはずなのだが、そんなことはお構いなし。さらにはゾンビを飼い慣らしたりといろいろ大変なことになってる。
ただロメロにはない、スピード感とアグレッシブ感が半端ない。見ていて考える隙を与えない緊迫感が結構心地よいところ。
ただゾンビというより野獣化?と感じた。
早送り編集のせいかあんま怖くない。
感想という感想が全然出てこないのだが主役のサラさんがかっこかわいいのでよしとしよう。これで主役がドンチードルとかだったらホント救いようがない映画になってた。

2013年3月6日水曜日

【映画】アウターゾーン



SFチックな町並みをアイディアとして欲しくて鑑賞。
あとゾーイデシャネルが出てるから鑑賞。
内容
身の毛がよだつほどつまらない

邦題は下界を意味するアウターゾーンであるが原題はTIN MAN。今流行りの脳男に対抗して顎男?と思ったがどうやらオズの魔法使いの鉄的なキャラクターの名前らしい。なら鉄男ならぬアイアンマンにしてしまえばよかったのに。DCには勝てなかったか。

さあ問題の内容だが何がつまらないって話の先が毎度読めすぎる。終始ダラダラした話の展開とウルトラチープなスーパーナチュラル的CGにより吐き気を催すがゾーイデシャネルの美貌で浄化するの繰り返しで愚の骨頂。


肝心のSF的な町並みもパッケージにでかでかと載ってる割には秒単位でしか出てこず、なにがしたかったのかまったくわかりませんでした

【映画】レック




スペイン産ゾンビ映画。封鎖されたアパートの中で広がっていく恐怖を描くメタ・ドキュメンタリー、モッキュメンタリー。

消防局に取材に来たカメラマンとリポーターは平和な消防署の仕事を番組で取材していた。いい画が撮りたいクルーはアクシデントやベルがなるのを平和な消防局で期待していた。夜もすっかり更け、もうアクシデントは起きないと諦めていたとき、突然警報が鳴る。クルーは待っていましたと言わんばかりに消防隊と同行する。事件はアパートに女性が閉じ込められたとのことだった。駆けつけるとすでに警察が来ており、住民に話を聞いているところだった。どうやら事態はただ事ではないらしく女性の叫び声は普通じゃなかったと話す住民。警戒しながらも閉じられたドアを破り突入する警察と消防隊、取材陣。中には長い通路とその先に老婆がたたずんでいた。もう心配ないと声をかけ老婆を保護しようとすると、突然警官が老婆に噛まれ事態は急変する。負傷した警官を病院へ運ぼうとするとアパートの入り口は完全に封鎖されており、彼らは悪魔の巣窟に閉じ込められた。
外から警察が封鎖したとスピーカーで呼びかけしまいには衛生部隊が来るまで待機せよとのこと。何のことかわからずパニックに陥るアパートの中にいる全員。やがて衛生隊が到着し死体を調査する。すると死体が起き上がり襲いかかる。逃げ場のない恐怖、終わりのない地獄が始まる。

 

極限状態の人間の心理状態を、見事にPOV(point of view shot)によりリアルに再現している。例えばゾンビの発生源について住民があらゆる濡れ衣をお互いにかけ始めるシーン。扁桃腺の娘が原因だとか、日本人の住民の年寄りが悪いだとか(結局最後まで爺は出てこなかった)、過去に起きた核実験の影響や犬のせいだと。女性はやはりヒステリーになり他人を恨み、老人は核実験などという時代を恨む。このアパートの住民は満遍なく世間の人間のタイプを住まわせていて、もしこんなことが起きたらこいつはこういう反応するよねという監督の遊び心が満天。見事あらゆるタイプの極限状態での反応を映し出すことに成功した。日本人に対するスペイン人の中国人とごっちゃになったようなイメージも見事に映し出されている。実際白人にとって黄色人種はワーワー騒ぎ立て、いつも怒っていて、生で魚を食うような連中だとしか思われていない。


これらの反応を見て思い出すのはもちろん3.11のときのツイッターでの【拡散希望】。情報飽和社会における要である電波が完全に死に、IHや交通などのエレクトリックに頼ったものは使い物にならず、安心を求めるがために人々は必要のないものを大量に買い込み、信憑性のない物を拡散していく。いつの時代も人間は根本的には進化していない。関東大震災の時の朝鮮人が井戸に毒がそれを物語る。もともと横のつながりが非常に強かった村社会日本だが、今ではそうでもないらしい。昔の日本といえば村の誰かが誰かの悪口を言えば次の日には村中に広がっていたものだ。拡散希望はしてないけど。しかし今では隣の人の顔すら知らないなんてのも常習化してきている。気を使うということの意味が根本から変わってきているのかもしれない。

 


命からがらに逃げた開かずの部屋の作りは非常によかった。セブンの犯人の部屋も頭逝っちゃってる感がガンガンに出てて最高だったが、こちらも不気味な研究や化学薬品が並ぶ部屋で、そこでは呪われた少女について研究されていたっていう設定も〇。ローマ法王から殺せと命令が下っていたり悪魔だとか意味不明な文書が山のようにあり、その中からテープレコーダを見つけ聞いてみると、伝染病の源である非人道的ウイルスをここで作っていたことがわかる。テープには懺悔する男の声が延々と続き、”彼女をこの部屋に閉じ込めた”なんていう今すぐ逃げ出したくなるコメント。そんなことはつゆも気づかず逃げ延びるために屋根裏部屋を空けてしまった報道陣はまさにパンドラの箱を空けるがごとく、悪魔の少女をこの世に舞いおろしたのだ。パンツ一丁の少女はもはや少女というよりヤマンバのような垂れた乳と白髪でビジュアルはキモさマックスである。そんな少女(ヤマンバ)から逃げようと息を凝らし、暗視モードでレンズ越しに探り探り逃げようとするが、例のごとくドンガラガっシャンして気付かれ貪り食われて終わる。つれー。



内容は結構ありがちだがやはりPOVの先駆けということでかなり質の高いゾンビ映画となっている。POVについてはどうやらジョージロメロのダイアリーオブザデッドのほうが先だったがこちらが先に公開となったためロメロがマネしたみたいになってるらしい。
POVといえばブレアウィッチプロジェクトがまず思い浮かび、そんでもってクローバーフィールドなんていうクソ映画があったなと思い返す。かつては手ぶれはノイズであって消すべきミスであった。定点カメラとスライドが常識であった映画界に手ぶれを大胆に使ったPOVが何をきっかけとして取り入れられたのかは謎だが、推測としてはスパイクジョーンズのようなスケート界からの監督であったりザックスナイダーのような今までの映画から大きく逸れた撮り方をする監督が多く台頭してきたことによる技法の発明だと考える。
今となっては手ブレ主観映像はメチエのひとつとして完全に定着し、その方法論は普通の俯瞰映像にも積極的に応用されている。しかし撮り方に工夫をこらさないとPOVはほんとに酔う。FPS酔いなんてもんじゃない。FPSならまだ自分で操作してるのだから辞めればいいが映画となるとそうもいかない。クローバーフィールドを俺はアメリカ行きの飛行機の中で見たのだが、夕飯を拒否したほどだ。大好きな豚肉だったにもかかわらずな。クローバーフィールドにはほんとにいい思い出はない。ラストのくそっぷりも救いようがないしあれを評価するメディアの臓器各位はどうかしてるとしか思えない。クローバーフィールドに死を!(*RECのレビューです)
 
そういえば続編があるらしいです

2013年3月2日土曜日

【映画】ジャンゴ 繋がれざる者




公開初日に見ました我らがタランティーノ監督の復讐劇第二篇。イングロリアスバスターズではナチスの冷酷な将校を演じ、アカデミー賞をかっさらったオーストリアの俳優クリストフヴァルツさん。三銃士では普通のおじさんだったのにむちゃくちゃ個性的な役を見事に演じていた。ジャンゴでは元歯科医の賞金稼ぎとしてジャンゴに銃を教えるシュルツを演じたが、その個性的な表情と存在感が評価され再びアカデミー賞を取った。劇中の演技はまさにアカデミー賞もので、嫌味もなくインテリジェンスなバウンティハンターをスマートに演じていた。


南北戦争の二年前、南部では奴隷が売り買いされ、当たり前のように馬以下の扱いを受けていた。ジャンゴもまたその一人であり、素足にぼろぼろの麻をまとい、鎖につながれ商品として運ばれている最中だった。道中歯医者の馬車が前からやってくる(この馬車がまたハイセンス)。歯医者は面々に対し三兄弟の顔を見た者はいるか?と問いかける。それに対し見たと答えたものがあった。彼こそジャンゴであり、三兄弟にひどい仕打ちを受けた一人だった。元歯医者のシュルツとつながれざる者ジャンゴは手を組み賞金稼ぎをする。旅を重ねていくうちジャンゴには妻がいることを聞かされ、その妻は奴隷農場を保有する商人の中でも極悪なカルヴィンキャンディだということを知る。ジャンゴは妻を救うべくキャンディのもとへ向かう。


まずいうなれば超面白い。正しくはWhat the fuckin cool niga!かな
脳筋映画というような感じではないが、頭をすっからかんにして口半開きでノイローゼみたいな顔してみると最高に面白い。ミスティックリバーなんかは眉間にしわ寄せて正座して燕尾服で見ないとだめだよ。カルチャーなんかも理解する必要なし、バックグラウンドも黒人奴隷制は負の歴史~くらいわかってればよし、あとはジェイミーフォックスの素っ裸だけでも一部の人には楽しめるんじゃないか?
ただ過去のマカロニウェスタンとか俳優を知っているとより一層楽しめる。事実、フランコネロが出てきてジャンゴとジャンゴの話をするからだ。さらには冒頭の夕日のガンマンの曲、途中MISSISSIPPIのドでかい文字のスクロールなんかもタランティーノのマカロニ好きをうかがわせる。ラストのあの感じは多分風と共に去りぬだよね?
大ざっぱにいえば全体を通してまず血糊、ニガー、そんで火薬、批判。これが根幹となる。今回はタランティーノ特有の"意味ありげに話す無駄な会話"はあまりなかったので、こちとら非常にありがたい。KKKの頭巾の穴のくだりはまあ無駄ではあったけどすげえ笑えた。映画に出てくるKKKっておーブラザーもそうだけど間抜けにしか描かれないよね。コントの大阪のやくざみたいなポジションか。

評価すべきはとにかく残酷にかつリアルにしたこと。CGを一切使わずアナログに爆薬で血糊をリッターで吹き出し、人間は撃てば血が出るんだよってのをクリストファーノーラン監督に示したような作りで感動(ノーランはいくら殴っても撃ち殺しても鼻血すら出さない)。残虐にすれば残虐にするほどアメリカ人はこの問題を親身に受け取り頭を抱えるからだ。アメリカが生んだ黒歴史=黒人奴隷制はここまでブルータルでクルーエルなものだったのだ。だからこそ評価すべきであり、最高に胸がスカッとする復讐劇として出来上がった。タランティーノ自身も罪の意味があるのかまたはおふざけなのか知らないがジャンゴに撃たれてダイナマイトで粉々に吹き飛ぶという。


今回の不満といえば、脇役を例のごとく豪華にしすぎて主役のジェイミーフォックスが影薄くなってたことか。サミュエルLジャクソンの厭味ったらしい黒人嫌いの黒人は最高にコミカルだったし、ディカプリオ初の悪役はくせがあってしかもよくこんな批判を受けそうな役を演じたなあと感心した。おまけにクリストフヴァルツとしまいにはフランコネロでてきちゃったら、もうジェイミーフォックスの出番なし。でもあの役はジェイミーフォックスじゃないと務まらなかっただろうからこれらは必然か。個人的にブラッドダイアモンドの彼でもいいかなとちょっと思った。

あとはいうならば音の誇張がすさまじかったかな。あれはB級感を出そうとして意図的にやったのかわからないがクローズゼロ並みの誇張で笑った。銃を撃てば大砲みたいな音出るし、歩けば巨人みたいなおとするから落ち着きがない。カメラワークの手動ズームは相変わらずB級感出ててよかったけどな。

音楽のチョイスもまんべんなくクラシックからブルース、ヒップホップまで出てきたし、ファッションも青のスーツとか緑のアウターとか最高にクールな仕上がりでオプショナルな面でも素晴らしい。
言わずもがな脚本も王道でありながら展開を楽しませ、なおかつ約三時間の長丁場を長いと感じさせないバランスのとれた無駄のないストーリー、計200回ほどのニガーというスラング(パルプフィクションではファックが200ほど)、何千リッターという血糊と何トンもの火薬、ロケーション、俳優、すべてにおいてタラちゃん最高!たまには頭を休めてジャンゴしたほうがいいぜ。