2013年9月24日火曜日

【映画】エリジウム

第九地区で話題となったニール・ブロムカンプ監督がマット・デイモンを主演に迎え、富裕層と貧困層に二分された世界を舞台に描くSFサスペンスアクション。2154年、人類はスペースコロニー「エリジウム」に暮らす富裕層と、荒廃した地球に取り残された貧困層とに二分されていた。地球に住む労働者で、事故により余命5日と宣告されたマックスは、エリジウムにはどんな病気でも治すことができる特殊な装置があることを知り、厳しい移民法で出入りが制限されているエリジウムへ潜入を試みる。エリジウム政府高官役でジョディ・フォスターが共演。エリジウムとはギリシャ神話に出てくるエリュシオンのことでありいわば天国のようなもの。エリートという単語の語源でもある。
監督の二ールブロムカンプは第九地区を撮った時まだ30代で、その若さでアカデミー賞候補になるのはスピルバーグの再来とも言われている。その監督のSF超大作ということで期待大で見に行ったのだが全然面白くない。細かく分解していけば面白いシーンもあるし内容も現代を痛切に皮肉ったプロパガンダ的なポリティカルメッセージ満載なのだが、本筋がしっかりしていないためにで、結局この人は何がしたかったわけ?と疑問に思った。
おそらく監督が言いたかったのは、医療がどんどん発達しもはや直せない病気はガンと馬鹿と風邪くらいで、不老不死の未来はそう遠くないと言えるほどに医療は行くとこまで行ったが、その恩恵を受けられるのは上層部の一握りだけであり、上層部の下には巨大なヒエラルキーのピラミッドが礎として存在する。資本主義でありながら我々は競争することができず、上に行くことは不可能と言える。それは人種であったり職種や運が大きな壁として存在するためであり、世界は進歩しようとも世界の99パーセントの人間は死滅し続けると言った内容であると感じた。事実、アメリカの富の50パーセントはアメリカの人口の1パーセントが保有し、1パーセントの彼らはアフリカで資源を得て莫大な資産を築き上げたり、投資による課税率の低い儲け方で金を増やすというようなケタの違う生き方をしている。先に起きたウォール街を占拠せよ運動がいい例だが上がのさばる限り下は苦汁をすすり続けなければならない。それゆえに人々は家を買って安定した資産を得(事実それは安定していなかったのだが)、医療保険に入れず病気にかかれば莫大な金をかけて病気を治すか死ぬかの究極的なオルタナティブを強いられる。それこそが2013年であり、過去に生きてきた先人達が想像する2013年とは医療や技術の進歩の形式的な面では正しく、内在的な意味では大きく違っていたのだ。
 
戦争はなく、病気もない、安全でクリーンなコロニーに住んでみたいと思いませんか?今なら人気の高い5区に住むことができます。
※ただし金持ちに限る
 
じゃあなぜこんだけ社会に対する痛切なメッセージがたくさん含まれているのにあんまりおもしろくないのか?おそらく全体的にふわっとしすぎてるからだろう。コロニーでの生活をもっとクローズアップしたり、マットデイモンが戦う理由がしっかりあればこの映画はもっとヒットすることができたはず。コロニーのデザインは2001年宇宙の旅的で素晴らしいし、相変わらずスラムの汚く低俗で必死に生きてる感を出す描写はうまい。だからこそ惜しいと言える。パワードスーツの残念感は何とも言えないが。(なんかに似てると思ったらこれだ...)



 
あとはジョディフォスターの使い方をもうちょっとちゃんとしてほしいところ。。。
カメラワークもいいしCGも違和感がないので第九地区というハードルを取っ払って観ればなかなか楽しめるはず。
 
PS
途中から敵がデヴィッドゲッタにしか見えなかったのは私だけでしょうか
 



2013年9月1日日曜日

【映画】マンオブスティール

 




ザックスナイダー監督クリストファーノーラン製作デヴィッドゴイヤー脚本ときたら観ないわけにはいかない。同時に期待しすぎる部分もあったので結果的に満足度は50/50。

ザックスナイダーといえば300、ウォッチメンなど、斬新な映像革命とやり過ぎなくらいド派手な映像効果で子供心を捨てきれない我々の欲求を満たしてくれるが、同時にセーラー服の金髪美女が暴れるだけのくそつまんねー映画にもなりかねない危険があったが、そこは天下のノーランがカヴァーしてくれたようだ。ダークナイトシリーズの脚本を担当したゴイヤーがついた割にはストーリーは割とシンプルかつ王道で、ダークナイトシリーズのようなヒーローの苦悩や善悪の概念みたいな深いアメコミ道徳教室は一切開かれなかった。希望!愛!善!みたいな単細胞感であったが、バカっぽさはない。軸として善は善でもそこに導く手段としてどんなチョイスをするか、がテーマになっていると考える。おそらく苦悩に満ち溢れるヒーローを再びやるのはDCコミックスのイメージが陰湿になってしまうことを考え避けたのだろう。


まず良かった点。とにかくスピード感と爽快感がいまだかつてない。戦闘シーンなんかは瞬きをする頃には地面にたたきつけられていたり、一瞬にして100メートルくらい吹っ飛ばされていたり、気を抜けない。空を飛ぶ描写なんかは誰しもが夢見た、自分の身体で空を飛んでみたいという欲求を満たしてくれる。おそらくこれ以上のスピード感が感じ取れる映画は前にも後にもないだろう。なぜならこれ以上早くすると肉眼で観れない。
またファイトシーンの激しさはザックスナイダーの得意分野である派手な見せ方で非常に興奮する。ビルに叩きつけてビルごと倒したり、地面が盛り上がるほどに叩きつけたり、超人×超人らしい戦いっぷりかつCGらしさがあまりなく違和感なく楽しめた。めずらしくハンスジマーの戦闘シーンでの曲の盛り上がらせようも〇。
それと無駄に建物を崩壊させるシーンの多さ。マイケルベイが無駄に建物を破壊することで有名なことからメイヘムをもじってベイヘムというが、アルティメット・ベイヘムと称していいほどビルが壊れ街が崩壊する。アメリカは自分の国が破壊される描写がお好き。カンザスシティで戦うシーンで、これでもかっていうほどセブンイレブンがぐっちゃぐちゃにされるのだが、おそらくあれはザックスナイダーがセブンイレブンに個人的な恨みがあるのだろう
最後に名優たちの演技。個人的にケビンコスナーの演技に感動した。得体のしれない息子を自分の息子として清く正しく育てる父なのだが、一番かっこいい父親像かもしれない。また本当の父であるラッセルクロウも感情のこもった演技をしており親の愛を感じ取れる名演であった。


逆に悪かった点。早い&CG&激しいで眼がむちゃくちゃ疲れる。気を抜けなさすぎで終わってから放心状態に。3Dなんかはおそらく知恵熱が出るだろう(いそがしすぎて)。またちょいちょいズームするカットがあり、多用しすぎじゃないかと感じ興ざめ。リアリティを出そうとしたのだろうが、クローバーフィールドを思わせるためマイナス。
あとはストーリーがもうひとひねりあってほしかった点。現状では敵はチョイ強いけど頑張れば勝てるスーパーマンでしかなかったのでずっと俺のターン感が少しあり。すんなり事が進むのではなくターニングポイントのようなものが必要だと感じた。人類を救う明確な理由がいまいちない。
あとはもう声高らかに言いたいのがゼッド将軍の髪型。なんだあのワックス覚えたての中学生みたいな束感。ローマ人か。それが気になって仕方がなかった。正直横にいた軍曹みたいな女性が将軍で良かった気もする。





アメコミ作家のほとんどはユダヤ系である。『いかにしてユダヤの歴史と文化がコミックブックを作ったか』という著作が出るほど圧倒的多数がユダヤ系であり、今作のベースであるスーパーマンの作者ジェリーシーゲルおよびジョエルシャスターも東欧出身のユダヤ系だ。そのためストーリーをひも解くと、そこにはただのアメリカ愛国者がお国の為に戦うだけの話じゃないということが分かる。
スーパーマンの本名はカルエル。父の名はジョーエル。ちなみにカルエルとはヘブライ語で"力"、"神"を表す。故郷は銀河の果てにある惑星クリプトン。そこは資源の採掘をしまくりもはや惑星が保っていられる状況ではなくなっていた。そのためカルエルの父は生まれた子供を遠く離れた地球に送る。その際にクリプトンの10万人のデータや記録であるコーデックスをカルエルの遺伝子に溶け込ませる。このコーデックスが後に重要なものとなる。惑星クリプトンは爆発して消滅しカルエルは宇宙の孤児となる。これはユダヤ人が戦争で祖国を失い世界に離散した事実を反映している。カルエルはアメリカの田舎町カンザスで拾われクラークケントという名前で地球人として生きる。旧約聖書に出てくるモーゼも同じように籠に乗せられナイル川を下りエジプトの王女に拾われ後にモーゼの十戒として知られる。またクラークケントという白人的な名前を名乗るのも、ユダヤ系は差別を避けるために偽名を使っていた事実を反映している。ではなぜユダヤ系なのに星条旗を背負って戦うのか?それは遠く離れた星から来た自分をかくまい、チャンスをくれた自由の国アメリカを守るため。いわゆるユダヤ系が60年代移民としてカリフォルニアに移り住み成功を収めてきたように時に右翼的なほどに愛国的な部分を象徴している。
 
 

クリストファーノーランてことで笑える要素は皆無といってもいいのだが唯一笑えたのがカルエルを少年時代いじめてた太っちょが後にIHOPで働いているところ。IHOPとはアメリカの内部(田舎)に多くある簡単なレストランで日本でいうすき屋的なポジションか。所謂田舎の仕事の末路みたいなのを風刺している。WALMARTだと直接的すぎるし訴えられるから避けたんだろうがWALMARTに宇宙船ごと突っ込んでほしかった。
 
マンオブスティール、和訳すると鉄の男。あれ、マーベルがこないだやった映画とキャラかぶってね?そういえばバットマンVSスーパーマンの製作が決まったが。宇宙船を拳で破壊するスーパーマンと脊中にひざ蹴り食らって半年くらい動けない状態だったバットマン、どちらが勝つのか!勝敗はいかに!