2014年3月24日月曜日

【映画】LIFE!

ウォルター・ミティー(ベン・ステイラー)はLIFE誌の写真管理部で働く真面目な社員。だが、思いを寄せる女性と会話もできない臆病者でもあった。
彼の趣味は空想をすること。空想の中で彼はヒーローとなり、どんなことでもできた。
しかし現実のウォルターは、デジタル化の流れによりLIFE誌の廃刊が決まり、表紙を飾るはずのネガが見つからないままでいたたために窮地に立たされていた。
ウォルターはネガを探すため、写真家のショーン(ショーン・ペン)を探す旅に出る。


半年前から気になってたベンスティラー監督の作品(原題secret life of walter mitty)。1947年にもダニーケイ主演で同名の作品が作られているが、原作が同じというだけで内容は妄想癖の主人公という以外は大きく違っている。
ベンスティラーといえばナイトミュージアム。監督作品だと前作のトロピックサンダー。どっちも全然好きじゃない笑
しかし予告の自分を変えたいと思いますか?というフレーズと
今を生きるすべての人へ
いろんな世界を見に行こう
壁を超える勇気を持とう
いろんな人と出会い
もっともっと分かりあおう
きっとそれは本当の人生の生きる喜びだから
それとうまくつなぎ合わせた大自然の映像美に涙した私はベンスティラーに賭けてみた。

結果は◎。非常にシンプルで王道のストーリーライン、適度な悪とメロドラマ、挫折、逆境を乗り越え感動のラストと、ディズニー配給的なお上品でスッキリした仕上がり。それにアイスランド、グリーンランド、アフガニスタンの壮大な自然の映像美が相乗して、どの層でもどの国の人でも楽しめる客層を限らない映画。深みだとか考えさせる映画を望む人には薄っぺらい映画だと感じるかもしれないが、自分は十分に楽しめた。

まずカメラワークが秀逸。飛行機を真上から撮ってミニチュアみたいにしたり、固定カメラで遠めのショットだったり、いわば絵になるシーンが多い。LIFE誌だからなのか理由は分からないが、がっつり見るのではなく飲食店やカフェなんかで垂れ流してても良い雰囲気を醸し出せるような、ディスカバリーチャンネル的映像美。これに1800円払ったと言ってもいい。
ロングボードを少年にもらい、アイスランドの坂を疾走するシーンは非常に爽快で、観客の我々も風を全身に感じるような気分になる。

次に音楽。ホセゴンザレスを筆頭にOf monster and men、Rogue Valley、さらにはデヴィッドボウイのspace odittyのカヴァーなど、やさしくて旅に出たくなるようなメロウなチューンが盛りだくさん。どの曲もシーンにかなりマッチしていて、of monster~のDirty Pawsが流れただけで涙線が崩壊しそうになった(単純に好きなバンドだってのもあるけど)。しかし残念ながらCMでいつも流れるホセゴンザレスのstep outsideは劇中では流れず(インストは有)、エンドクレジットで流れる。あれがスケボのシーンで流れたら最高だったのだが....
個人的にはデヴィッドボウイのspace odittyを入れたのはかなり高評価。2001年宇宙の旅のMajor Tom(トム少佐)とウォルターをかけていてナイスなチョイスだと。

Ground Control to Major Tom
Ground Control to Major Tom
Take your protein pills and put your helmet on
「地上基地管制官より、トム少佐へ」
「地上基地管制官より、トム少佐へ」
「プロティンピルを飲み、ヘルメットを装着せよ」

Ground Control to Major Tom
Commencing countdown, engines on
Check ignition and may God’s love be with you
「地上基地管制官より、トム少佐へ」
「カウントダウンを開始し、エンジンを点火する」
「点火装置確認。神の御加護があらんことを」

This is Ground Control to Major Tom
You’ve really made the grade
And the papers want to know whose shirts you wear
Now it’s time to leave the capsule if you dare
「こちら地上基地、トム少佐へ」
「打ち上げは成功した」
「新聞は、少佐の着ているシャツのことまで知りたがるよ」
「さあ、勇気を出して船外に出るときがきた」

This is Major Tom to Ground Control
I’m stepping through the door
And I’m floating in a most peculiar way
And the stars look very different today
「こちらトム少佐、地上基地へ」
「今、ドアから船外に出た」
「そして、えも言われぬ感覚で浮遊している」
「星々は、地上で見るのとは全く違っている」

For here am I sitting in a tin can
Far above the world
Planet Earth is blue and there’s nothing I can do
私は今、宇宙船に腰掛けている
住み慣れた地上の遙か上空で
地球は青く、私はただただ見つめているのみ

https://www.youtube.com/watch?v=ZrZlhD0Oeto

旅行の醍醐味って人それぞれだとは思うが私はお金を出して何かを得るよりもその旅の出会いを大切にしたい。日本では見れないもの、出会えないもの、吸収して成長すること、そこまでを含めて旅行だと思う。帰るまでが遠足ってそういうことだったのだな


こんな感じで大手ブランドから出たチョコみたいな臭みも深みも捻りもない感じだけどどんな層にも愛されるような上質なものなので見て損は絶対ない。しかしショーンペンは渋いなあ!


旅行行きたい。





2014年3月21日金曜日

【映画】それでも夜は明ける

PLAN Bのブラピによる、アメリカの負の歴史を現代に再びブっ掲げたトンコツ映画(むちゃくちゃ重圧的ってこと)。アカデミー賞作品賞受賞。監督は『SHAME -シェイム-』のスティーブマックイーン(アクション俳優の方ではない)。主人公はキウェテル・イジョフォーが演じる。

1841年、奴隷制廃止以前のニューヨーク、家族と一緒に幸せに暮らしていた黒人音楽家ソロモンは、ある日突然拉致され、奴隷として南部の綿花農園に売られてしまう。狂信的な選民主義者エップスら白人たちの非道な仕打ちに虐げられながらも、彼は自身の尊厳を守り続ける。やがて12年の歳月が流れ、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会い……。


 
アカデミー賞取ったからというノリで観るとその重圧感にやられてしまう。奴隷映画でさっぱりしたものを求めるのは愚にもつかぬかもしれないが、タランティーノのジャンゴで、ある程度スカッとした復讐劇を見せてもらえていたので油断した。重すぎる
正直なぜ今これほどまでにアメリカの負の歴史である奴隷制を掘り返すのかは分からないが(奴隷解放から何周年とかでもないし)、オバマの就任やホワイトアングロサクソンプロテスタントがマイノリティになりつつあるという時代の変化を危惧しているためなのかもしれない。


17世紀から19世紀にかけて、およそ1,200万人のアフリカ黒人がアメリカに渡り、そのうち400万人が奴隷としてアメリカで働いた。また現在黒人の30パーセントは白人の血が入っている。これは純粋に白人と黒人が結婚して混じったのではなく、白人奴隷主による強制的な行為によるものである。1865年のアメリカ合衆国憲法修正第13条の成立で終わったことになっているが、差別などは今現在でも根底に存在する。木にぶら下がる黒人の死体のことを称して奇妙な果実として歌ったビリーホリデイの歌が1939年だからつい最近まで黒人は人として見られていなかったということになる。これらを踏まえれば、オバマ大統領が就任したということの歴史的に見ても大きな改革だったということが分かるだろう。また彼の言うCHANGEという言葉の重みが理解しているかどうかで違う。

奴隷映画につきものといえば聖書綿畑ムチ鬼畜な白人だが、それでも夜は明けるではそれらをコントラストを最大限にしてこれでもかといった具合にねじ込んでくる。綿畑で摘み取る数が昨日よりも少ないものは鞭打ちの刑に処され、ファスベンダー演じる鬼畜領主に、俺は鞭打ちがたまらないんだと言われながら背中をぐちゃぐちゃにされる。それはもはや映画パッションに通じる残忍さで目を覆いたくなる。しかしこれはフィクションではなく現実であり、今なお世界を率いているアメリカがついこないだまで行っていた恥ずべき行為なのだ。どの国にも隠したい自国の歴史というものはある。魔女狩り、特攻隊、ギロチン、タイヤネックレス、麻薬戦争、イラク戦争。歴史とは同じ過ちを繰り返さぬよう必要な杭であり、今回こういった趣旨の作品がアカデミー賞をとったのは、アメリカが今一度反省し改革の時を迎えている事を表すと考えた。

内容について。
お涙ちょうだいなところはラストにちょっとあるがいまいち感情移入しないのが残念。現実ではあるがあまりにも非現実的すぎるのか、あるいは黒人だから慣れ親しんでないからなのか。
しかし仲間が死に死体を埋め、奴隷全員でゴスペルを歌うシーンは涙腺爆発必至。ブルースやゴスペル、ヒップホップは魂がある。ただ口先だけで歌うのではなくバックグラウンドやパワーを感じる、心揺さぶられる魂がある。https://www.youtube.com/watch?v=mAZhQQN758g
劇中歌ROLL JORDAN ROLL↑は名曲。鳥肌総立ち。ソロモンが絶対に生きて家族の元へ帰ると固く決意した表情を見せながら歌うシーンはなんとも素晴らしい演技だった。

ベネディクトカンバーバッチ演ずるフォードと呼ばれる農主は数少ない人の心を持った男だが、時代の波に飲まれ奴隷制をやむなく取り入れている。熱心なキリスト教徒であるがその説教は奴隷の泣き声でかき消され神の元には届かない。当時奴隷を殺してもペットを殺した罪と同等だった。しかも自分の奴隷においては罪に問われない。家畜と同じレベルだったのだ。なぜならキリスト教は殺生をするものは地獄の業火で焼かれる。それを避けるためにも黒人は人ではないと思い込んでいたのだ。







劇中、鬼畜農主ファスベンダーとブラピが話すシーンで、ブラピは奴隷制の問題に気づき主張する。ファスベンダーは奴隷制が覆るなんてことは金輪際ないという。そう、絶対にあり得ないと思われていた黒人による白人を従わせるという方程式が現在オバマの就任によって成立したのだ。今でもアメリカはキリスト教原理主義を中心とする内部アメリカ人の保守派(共和党)と改革を望む民主派で対立している。しかし時代は変わった。いつまでも誰かが優位に立つ形式は必ずや崩れる。ついこないだまで、人間は神によって作られたものだと思われていたし、地球はテーブルの形をしていると思われていたし、佐村河内は耳が聞こえないもんだと思っていた。当たり前だと思われる常識もすぐ先には何が起きるか誰も分からない。今後また大どんでん返しのような展開が我々を待ち受けているかもしれない。


音楽がまたハンスジマーだよ!!