2014年9月7日日曜日

【映画】ケープタウン






世界的に見ても危険な国ランキングで上位に挙がってくる街、ケープタウン。アパルトヘイトの撤廃後、ケープタウンに大量に国内や周辺諸国から住民が流入したが、彼らの多くは失業者となり、治安が急速に悪化した。この国の治安の悪さは貧困と社会的格差に原因がある。
 かつては南アフリカにある美しい町として多くの観光客が訪れていたが、ここ数年は犯罪とギャングの対立戦争の中心地となりつつある。ヨハネスブルグほどの治安悪化は見られず、昼間なら徒歩での外出も可能ではあるものの、犯罪は激増している。日本国の外務省からは、市の中心部(シティ・ボウルおよび北西部)ならびに市東部のケープ・フラッツ地区には注意喚起が発出されている。
ちなみにアフリカでもっともやばいのがソマリア。ソマリア沖海賊問題で日本の諸外国との貿易において他人事ではないが、警戒レベルはレベル4でこれは外務省の出したデータによるもので、Lv1気をつけろLv2やめとけLv3行くなLv4逃げろみたいな感じで4は最大。
さらに世界で最も治安が悪いのはホンジュラスのサンペドロスーラ南米から北米までの麻薬の経由地になっており殺人事件発生率は日本のおよそ400倍。グランドセフトオートの世界を身近に感じられる世界だ。ちなみに2位はワールドカップでふるぼっこにされたコートジボワール。
 
先ほど治安の悪化について原因は貧困と社会的格差にあると言ったが、経済的不平等が生じる原因は、賃金・収入の大きな違い、労働市場税制の穴やタックスヘイブン、コンピュータ化と技術革新、人種による不平等の要因が挙げられる。ただし日本と大きく違う点は天然ガス、ダイヤモンド、鉄などの資源が豊富なのに対し技術がそこまで発達していない、さらにはそれを他国が教育するのではなく、外資として流出してしまっているために大きな格差の原因となった。また、長らく続いていたアパルトヘイト(人種隔離政策)の影響により第9地区でテーマになったような、貧しい人々がある一帯にすし詰めにされる状態になったため急速に治安が悪化した。仮に自分たちに置き換えて考えてみると、足が短い人間は職に就けないという政策があったとする。そうするとある地帯に足が短い人だけのコミュニティが出来、そこには裕福な人は近づかなくなり、またてっとり早くかつ公的な職ではないことをする。それは結果的に薬物の売買であったり武器の不正取引になってくる。
ソマリア沖の海賊も豊かな漁場を他国の大型漁船が大量に持って行ってしまったために枯渇し、っやむを得ず通行するタンカー船などを襲って身代金を要求し、生活の基盤とするしかなかったのだ。
今回この映画ケープタウンでも因果応報というか、巡り巡って返ってくるというか、報復のようなものがテーマとして根底にある。
主人公の一人である黒人捜査官のフォレストウィテカー(以下黒釣瓶)は以前アパルトヘイトにより父を亡くし(それももっとも残忍なタイヤネックレスによる死刑で)、本人も警察犬に金玉を噛み千切られ夜の営みはマッサージだけを強いられるようになってしまう。
彼自身寛大なため一連の出来事は許しているのだが、ある事件をきっかけにそのリミットが外れ、頼りない黒釣瓶から暗黒釣瓶へと進化する。その表情の変化は見物。
始めから最後までずっとガサツで野蛮なオーランドブルームよりも切れたら怖いのはこういう真面目な怖い人だよなあとふと思ってしまった。
 
 
映画全体を通して南アフリカのほのかに危険な雰囲気を撮り方や音楽でしっかりと演出できているし、それを証拠づけるような上質なバイオレンスもあり、また刑事ものとしての、じわじわ解決に近づくサスペンス要素もあり、文句なしの良作。
最後黒釣瓶は殺すべきだったのかまた許すべきだったのかを見終わって考えた。
セブンで味わった何ともしっくりこない胸に引っかかる感じに似ている。
殺すことでバイオレンスは繰り返されているということを訴えていたのか、あるいはあそこで清算しなきゃそれこそしっくりこないだろと監督が感じたからなのかはわからない。
ただオーランドブルームが最後、自分の中で父と和解したことだけがこの映画において唯一の救いだった。