2014年11月27日木曜日

【映画】インターステラー

 



2014年度公開された映画は2001年宇宙の旅を感じさせる物が非常に多かった。アンダーザスキンでは、冒頭から目の光彩を反転させてワームホールを意識していたし、ルーシーでは猿と触れるスカヨハが超越した存在=所謂導き手モノリスでありスターチャイルドであった。
自分は熱狂的な2001年宇宙の旅信者であるし、スタンリーキューブリックの虜になったマゴッツの一人なので宇宙系の映画となればどうしても比較してしまいかねないが、今作は2001年への挑戦であり、進化であり、未来であった。要するにぶったまげた。

まず挑戦と言ったのは、本作の三時間の尺におけるプロセスが2001年を意識したものであり、シーンごとのオマージュを多く感じられる点にある。例えば今回のキーとなる時計は実際のアポロ計画の時に使用するオメガ製とは異なりハミルトン製だ。なぜかといえば2001年ではハミルトンを着けているからだ。また2001年~では当初ワームホールは土星に配置したかった。しかし土星の輪に満足しなかった完璧主義のキューブリック御大はやむなく木星にワームホールを置くことになる。そのキューブリックの無念を晴らすつもりかどうかは分からないが、ノーランは土星の横にワームホールを置いた。
また進化というのは刷新すると言う意味での進化である。2001年は当時の最新技術を限界まで集め、エッジを効かせ、極限までスタイリッシュにした。物理学者を製作に加え、まだ月にも降り立ったこともないのに、あのビジュアルを完成させた。そのため今も色あせず、昔のSF映画にありがちな宇宙探査してるのにフロッピーディスクかよ!みたいな興ざめがなく今も神格化されている。おそらくインターステラーも未来代々語り継がれる作品になるであろう。同じように製作に物理学者を交え、今分かってる最大限の技術と科学で宇宙へのフロンティアをビジュアル化した。
おそらく今後作られるSFは2014年度に相当強力な宇宙映画が作られてしまったために、かなりハードルが上がり、映画は量産され駆逐され選別されるだろう。エッジが効いていい作品が多く生まれるという考えを取れば、今作は映画の未来だと言える。


個人的にはTARSのキャラクターが非常に良かった。ビジュアルや導き手のようなポジションはモノリスのようでありながら、喋る上にユニークなジョークを飛ばすなど人とは違う第三者的な立場が存在することでこの映画のいいエッセンスになっていたと思う。事実あれが人であったとするならば、あるいはプロメテウスやエイリアン、ブレードランナーのような人型アンドロイドだとしたら、陳腐なものになってしまうだろう。無機質な有機物体であるがゆえに非常に愛着の湧くキャラクターに仕上がっていた。作中、ジョークや正直度のレベルを設定でき、それに伴いTARSが冗談をかますのだがそのセリフの中で正直度を100%にするとどうなると問うと、あまりいいことはないと答える。これは明らかに正直度100%で矛盾が生じ乗組員たちを殺したHALへのオマージュでありそのセリフを聞いた自分はスクリーンまで駆け寄って泣いた。

毎度説教的というか哲学を混ぜ込むノーラン先生の今回の授業はそこまでへヴィなものではなく(今までと比べて)登場人物に割と陳腐なセリフを語らせつつも映像で見せるという今までとは少し違う変化球な授業であった。実際登場人物に例のごとく哲学的なセリフを語らせて一歩間違えれば、おいてかれてラストまでよくわかんなくなるなんて自体が多発しただろうから、ダークナイトで商業的に当てたノーランにはもはやなんだかよくわかんねえけど意味があるっぽいセリフ(悪の法則のカルテル等)を語らせるのは難しいだろう。

今回、いや過去作から今に至るまで、あるいは近年の作品から自分が汲み取った監督の思いは、内側ばかり見ないで外側を見ろということ。インセプションでは深層心理にずぶずぶとハマっていって抜け出せなくなるディカプリオが記憶に新しい。またディスコネクトではSNSにはまった人々が闇に落ちていく他人ごとではない現状を映画化した。そのポスターは上を見上げていた。
現代人は新しい技術をすべて身の回りの便利さに費やし、スマートフォンはどんどん便利になり、上を目指すスピリットを忘れてしまった。現状で満足し、このまま欲におぼれてやりたいようにやってるといつか食糧難になってみんな畑耕しては放置して砂漠化して地球住めなくなっちゃうよ?フロンティアスピリッツとりもどそうぜ?みたいなノーラン先生の教えをぼくはこのえいがでかんじとりましたまる。
我々消費者がすべて悪いみたいな突き放した感じにもとれるけどね。

アメリカ人、あるいは人類には根本的に冒険心、探究心、フロンティアスピリットが備わっていると思う。何かを極めようという考え、金鉱を求め西へ、神の土地イェルサレムへ、目的は何であろうと人は確率は低かろうが自己犠牲によって探究する。だからこそ類人猿から人類に至るわずか数千年でここまで地球という惑星をおおよそ支配するまでに至った。
今後地球が滅びるかどうかはわからないが、インターステラーを見ることによって(三時間に耐えて)何か考えるきっかけになればと思う。
おそらくゼログラビティよりも劇場で見ないと後悔する作品。




彼の登場で絵理事有無の続編かなと思ったのは俺だけじゃないはず。