2017年12月31日日曜日

【映画】2017年映画ランキング


昨年に引き続き黄金期の大作映画の続編が多く散見されたが、多くは当時リアルタイムの古参客を集めるための集金メソッドでしかなく、映画界のネタ切れさえも感じさせてしまう一年だった。
が、それに心躍ってしまうのは奇しくも事実。ただの古株集めで終わっているものもあれば、今の技術を存分に活用して刷新したものもあり、ランキングにもそれは強く反映された。
2016年度が全体的に映画不振だったこともあり、今年は良作がごまんと揃っており、おそらく映画をたしなむ人たちにとっては毎週のように見なければならない映画があるような状態で見るのを諦めた作品も多いだろう。

映像コンテンツの動きがこれまでと大きく違う点として、ドラマが映画に負けず劣らずなコンテンツとして確立しつつある事が挙げられる。
もちろんfriendsや24など過去幾度となく訪れた。しかしこれまでのムーブメントと大きく違う点として①制作費が尋常では無いこと、②テレビで一話ずつ見る時代は終わったということが挙げられる。
これまでのドラマはある程度決まったバジェットで制作され、それを上回らなければ打ち切り、うまくいけば何シーズンも続くような、場当たり的な動き方をしてきた。しかし今回のドラマブームは初めから映画の制作費を上回るような巨額のバジェットで製作され、毎週一話ずつ配信されるのではなく、初めから13話までアップされるようなやり方をしている。またどんなに売れていてもシーズン4までしかやらないと初めから決めていればそこで終わるなど、ストーリーを何番煎じもして最後には既視感満載の終わり方をするようなやり方はしなくなった。ゲームオブスローンズやストレンジャーシングスなど、CGや撮影技法はもはや映画に引けを取らないクオリティとなっており、ドラマはもはや映画館で見たくなるようなクオリティだ。

またNetflixに挙げられるような、映画館での上映はせずにストリーミングサービスに止まるようなコンテンツも徐々にうねりを上げてきた。急忙を極める現代人にとって11秒が惜しい中映画館へ足を運ぶのは難しくなっていることもあり、まさに需要と供給のバランスが取れた結果と言える。

そのため必ずしも映画ランキングは映画館で見たものとは限らなくなって来ている。
ましてやドラマと映画の境目すら怪しくなって来た。(その境目は回数というある種人為的な縛りがあるだけである)

とはいえ良作が多すぎたこともあり、ドラマと映画の壁は一応残して置こうと思う。

<<今年度映画ランキングベスト10>>

10位 goodtime
全編ワンオートリックスポイントネヴァーの奇怪なスタイリッシュで脳幹に直接響くサウンドトラックと、LSDをキメたかのような
フラッシュバック的映像美の連続に、ストーリーがないとかそんなことはオプショナルなものでしかなく、理解するな感じろ!というサフディ兄弟の若く強いメッセージを感じられた。NYのゲットーを描いている映画は数多くあるが、あれほどまでにかっこいいわけではなく、小さな昆虫が底力で生きているのをクローズアップしたかのような絵面は強く印象に残った。





9位 メッセージ(音楽満点)
徐々に大御所頭角を現しキューブリックと比較されるまでに上り詰めたドゥニヴィルヌーブ監督のSF大作。正直ブレードランナーを後ろに控えていたこともあり、この作品を見てその結果が決まってしまうような気がしてしまいはじめは観るのに気がひけていた。
今思えばそんぞそこらの監督が撮っていれば地球が静止する時みたいなチープでああそんな映画あったなと忘れ去られていくようなクソ映画になりかねないビジュアルとストーリーを、見事に神秘性を持たせて傑作に変えた。音楽の使い方が秀逸で、これまで触れたことのないとてつもない何かと接触しているという緊張感を終始感じられた。時間という人為的な概念を外して考えるというスタイルは斬新で、後世に語り継がれる作品である事は間違いない。





8位 ネオンデーモン(映像満点)
色盲で色味がよくわかっていないレフンの新作。これもまたしょービジネスの光と闇という使い古された古紙のようなアイディアであるにも関わらず見たことのないおぞましさと美しさを表裏一体にしボコボコにされたような感じだった。
リンチ御大のマルホランドドライブでおそらくこの手のテーマのいいとこ取りは全てされたものだと思っていたが故に、まだこんなに楽しませられますかこのテーマ!と、ど肝を抜かれた。カラフルなチョコレートを振りかけた人間の臓器を金色の額縁にはめて飾っているかのような、会田誠的エログロナンセンスが◎。


7位 ガーディアンズオブザギャラクシー
前作を私は劇場で見なかった。またマーベルの金集めかと無視しており後で家で見て飛び起きた。
こいつああ傑作じゃねえか!!
冒頭から掴まれる音楽に始まり音楽から音楽に至るまでもう音楽が音楽!!


6マンチェスターバイザシー(警察署の自殺未遂演技満点)
昨今の映画は撮影技法もCGも発達しごまかしが効くようになってきている。
ただどんなに時代が変わろうが普遍的なのは演技力だ。こればっかりは何がどうなろうと見透かせる。




5ゲットアウト(全力疾走黒人)
正直開始早々にチャイルディッシュガンビーノの今年のアルバムが流れた瞬間満点にしたかった。
ホラーをいくつも見て来てこれはこう、とある程度フレームが決まりつつある中で、ただ走るだけ、ただ泣くだけがこんなにも気持ち悪く怖いのかと気がつかせてくれた。そう、下手にクリーチャーを見せたり血だらけにするよりも、当たり前が少しずれているのが一番怖いのである。99%が満足しているという謳い文句の通り、観る前は誰も期待しなかっただろうが、昨今問題視されている黒人の過保護問題を見事に汲み取ってホラーという入れ物でテーブルに並べた。調理方法、提供タイミングともに最高のタイミングで最高の結果となった。



4位 ローガンラッキー
スティーブンソダーバーグの傑作オーシャンズ11といえば知らぬ人間はいない傑作だが、
本作はそのオーシャンズ11のインスタント版といった感じだ。
無論、作りがチープだとか話がしょぼいとかそういう意味ではない。
オーシャンズと言えば完璧な計画と完璧なメンバーで敵はおろか我々まで騙し抜く。
一方こちらは最初から頼りなく残念すぎて全然感情移入しない笑
でもその不恰好な姿がなぜか応援したくなってしまうのである。


3位 マグニフィセント(胸熱賞)
七人の侍、荒野の用心棒好きからすればこれを入れないのは罪に値する。
例のごとく全然生き残らないのが最高!!


2位  IT(もうあの頃には戻れないで賞)
小学生の頃の夏休みの思い出といえばチャリで友人と地区センターに競争しにいって駄菓子くって秘密基地を作ってぐっすり眠る。宿題はやらない。その繰り返し。今思えばあれが全盛期だし誰しもがきっとそう。そしてこの映画にはそれが詰まっている。ピエロがどうとかはおまけでしかない。一番怖いのはもうあの頃には俺たちは戻れないのである。号泣である。ブレードランナーに個人的な思いがなければ問答無用に1位。


1位 ブレードランナー 2049(人生ベストランクイン)
個人的な思いが強すぎる作品。早く酸性雨の雨が降り注いで知らない言語が飛び交う薄暗いトタンだらけの世界になって欲しい。


映画については以上だが今年はドラマも熱かったのでドラマベストも。

⭐️ドラマベスト5
1位 アトランタ(人生で見たドラマでNo1
2位 ストレンジャーシングス(あの頃には以下略)
3位 ミスターロボット
4位 ウェストワールド

5位 マインドハンター

2017年11月2日木曜日

【映画】ブレードランナー2049










ブレードランナーを初めて観たのは確か高校生の時だったと記憶している。
元々カルトムービーであることは聞いていたし、SFが好きで好きで仕方がなかったので、観るまでどんな世界が待ち構えているのか楽しみで仕方なかった。
蓋を開けてみると、すでにいろんな映画や漫画(アキラやNY1997)で観たことあるような世界が広がっていた。こういう感じなのか…と多少拍子抜けしたあと調べて見れば、後続の映画はほとんどがブレードランナーを意識しているではないか。そこから一気に引き込まれて何回何回も見た。

人生で最も好きな映画は何かと聞かれると、1本に絞るのは非常に難しいが、本作は限りなくそれに近い。本作の製作がスタートしたと聞いた時は非常にワクワクした。しかしスコットが他の撮影の都合上監督を降板したと聴き、キューブリック信者であると同時にリドスコ信者でもある私は続編の監督がスコットではないことに少し心配になった。
心配の大きな理由としてスターウォーズの続編のフラストレーションに起因する。7作目フォースの覚醒を紐解いた時、そこにあるのは豪華な同窓会だった。もちろんその瞬間は高まりを感じられたが、映画としての目新しさや感動はそこには無かった。

本作ブレードランナーの続編を監督するのは原作の大ファンだというヴィルヌーブ監督。
昨年年間ランキングベストの1位だったボーダーラインの監督であり、映画メッセージでオスカーを取った近年急上昇中の監督である。
彼の作品は共通してアウトサイドよりインサイドにフォーカスした撮り方をする。
どんなにスケールの大きな、例えば巨大な宇宙船が突如現れようが、麻薬カルテルとの悍ましい闘いを描こうが、人の心理描写や形成するマインドを浮き彫りにする。
また当たり前の常識が外的要因の登場により一気に天地が入れ替わり価値観が変わってしまうという作品が多い。ボーダーラインのカルテル、メッセージの宇宙人、プリズナーズの誘拐犯、複製された男のドッペルゲンガー。本作で言えば人間の可能性。

果たして2049でも2つで十分なのか…

ブレードランナーの問いとして、近い将来あらゆるものが入り乱れ、隣にいるのが誰かということはおろか、自分自身が何者なのか見失ってしまうという主題があった。人を形成するものはチープで確証がなく、それゆえに人は自分とは何かを見失いがちである。
それを踏まえればヴィルヌーブ監督は本作の監督をすることは匹敵なのではないかと思い始めた。
ただ、SW同様、同窓会になってしまうようであれば残念なのは事実。大役を任されたヴィルヌーブ。ただこれがマイケルベイとかになっていたら、落胆どころか30歳くらい老けこんでいたと思う。

■あらすじ
2049年、更に荒廃が進んだ地球。人類の生存を確実にするためにタイレル社から製造されていたレプリカントと呼ばれる人造人間が、度重なる彼らの反乱によって倒産した同社の資産を買収したウォレス社によってさらに洗練され、寿命に制限のないモデルに改良されて、人間社会に組み込まれていた。LAPDに属する最新型レプリカント・ネクサス9型であるKは「ブレードランナー」として、かつて反乱を起こしたレプリカントである旧式のネクサス8型を「解任(殺害)」する職務に就き、家ではウォレス社製のホログラフィーである恋人ジョイと過ごす日々を送っていた。
Kは旧式レプリカントの捜査中、ある農場に赴いて反逆レプリカントの1人であるサッパー・モートンを「解任」した際、農場の木の根元に箱が埋まっているのを見つけた。発掘の結果、内部には遺骨が入っており、法医学的分析でその死骸は帝王切開の合併症の結果として死亡した女性レプリカントであることが判明する。生殖能力がないはずのレプリカントが子を産んでいたという事実に、事態は大きく展開していく。


●風景について
冒頭は前作と同じように目の光彩を映してから、現代の動力源ソーラーを映し時代が変わったことを感じさせる。(前作は炎を吹き上げる火力発電のようなものだった)。もはや燃やすものすらなくなって、僅かな太陽の光だけが動力源であることが分かる。
また街並みはホログラムが多く、屋上のみならず人混みの中にも投影するような広告を出していた。相変わらずSONYやPANNAM、Coca-colaが名を連ねるがどこも今は下火。(日の出食堂のインパクト…)
●食べ物について
前作のうどんとかデッカ丼みたいな今と変わらない食事ではなく、おそらくウォレスが作った人工食品(プロテインがまさかの水中にいる虫)で作られた自動販売機で買って食うようなスタイル。
Kが家で作っていた鍋にルーのかけらのようなものを入れたものは、出来上がるとところてんみたいみたいな麺に。あれも虫か何か?

酒については相変わらずデッカードはジョニーウォーカーのブラックラベルを飲んでいたが、グラスは残念ながら前作と同じアルノルフォ・ディ・カンビオではなくなってた。(イタリアの老舗グラスメーカー)






●テクノロジーについて
昨今google homeのような話しかけるとカーテンを開けてくれ音楽を流し電気をつけてくれるようなホームタイプのAIが売られ始めたが、本作ではジョイという女の子が料理を作ってくれたかのように振る舞い、タバコに火をつけ、ダンスに誘う。何より誘ってる方がホログラムなのに、誘われている方もアンドロイドな訳だから、人間の我々はもはや蚊帳の外である

レプリカントは口頭質問の際に目の光彩を確認するだけでは識別できず、2001年宇宙の旅のHALのような、高度なテクノロジーを用いなければならないくらい精巧になっている。またその機械でベーシックライン (機械の基準規格のようなもの)から逸れていないか判断する。まるでアランチューリングのチューリングテストのよう。

役者について

同窓会になっているかといえばノーとは言えないが、ただただ前作のキャストを出して喜ばせようとするのではなく、キーマンとして出していたしトータルで見れば辻褄は合っていたので◎。

ライアン・ゴズリングのキャスティングはハリソンフォードからの名指しらしいが、昨今の活躍を見る限り始めはビジネスの香りがした。ただ見終わって感じたのは、感情があるのかないのか分からないが徐々に感情が芽生え始めてくるような難しい役を見事にこなせていたと思う。おそらく前作のコアなファンからの厳しい眼差しもあるだろうしやりにくさで言えば上位に入ってくるだろうが、余裕のある演技ができていた。ただ全体を通して一人で全てを担いすぎかなとも思う。
また相変わらずスラングで叫ぶのだけど、これまでのゴズシャウトで一番良かったかな?(オンリーゴッドの反抗期の中学生が親に怒られて逆ギレするようなシャウトと比較して)
終盤で登場するデッカードのワンちゃんは本物なのかが本作の最大の謎となったわけだが、ウイスキーをぺろぺろする、本物の木で木彫りを作りたがるデッカードからして、あのワンちゃんも本物なのでは?と思う。人工物だったらライアンゴズリングが来た時点で嚙み殺すようにプログラムされてるだろうし、ジョニーウォーカーを機会が飲むのであればバグだろうしね。

ロビンライトはハウスオブカードといいワンダーウーマンといい管理者ポジションやり過ぎでは?


個人的に解決しなかった問いを以下に考察する。

★考察1
蜂が意味するものとは?
デッカードに会いにKがラスベガスから地上を練り歩くシーンがある。
途中煌びやかな過去を思わせる像が対になっているが、その下に突然養蜂箱が現れる。
闇市のアフリカ系男が言うように、あの辺りは放射線でやられ生物は一切存在しないはず。故に蜂が集める花も存在しない為、あの蜂は本物ではなくフェイクだと言うことがわかる。


ではなぜあそこで蜂を出したのか?前作でレイチェルがデッカードから受けたテストの際に、「蜂が手に乗ったらどうする?」と言う質問で「殺すわ」と答えた。しかしKは大量の蜂が手についても微動だにしないあたりから、レイチェルの子供ではないのでは?と言うキーになっている説。ただ問題として蜂の箱を何に使っていたのか?ペットにするには嗜好からかけ離れているし、生活のためとなると合理性に欠ける。蜂は放射線に非常に弱く放射能が強い箇所には生きないと言われている事から、あのエリアは放射能に毒されていないという意味を出したかった?いずれにせよデッカードが蜂を何かに使っているという設定はあるだろうが、監督に聞かない限りは分からない。

★考察2
ウォレスはどうなった?
ウォレスの右腕ラブを溺死させてんんとか逃げ延びたが所詮は機械。バックアップも取ってるだろうし次の日には下手したらラブは5000体くらいに増えてるかも。ウォレスの最終目標である新人類の繁栄のため、デッカードはまだまだ追われる運命にある。


★考察3
片目の婆ァンドロイド軍団は戦いに備えるか?
Kを救ってくれ残酷な現実を告げたアンドロイド革命軍と母は地下での密会以降出てきていない。考えられるのは再び大停電を起こし、抑圧から解放されるアクションを何かしら起こすだろう。かつて黒人が白人に怒り南北戦争をしたように。

★考察4
LAPD本部長とラブの関係
ラブが本部長を殺した後一筋の涙を流した。また会話の雰囲気から初めて会ったかのようには見えない(部屋に入るなりここは暗すぎると一言)。デッカードはウォレスせいだろうし他にもアンドロイドを仕入れているような発言も本部長の口から出ていたので、取引を交わすうち愛しあうような関係になった?

★考察5
結局デッカードはどっちなのか?
おそらく公開前ないしは前作公開後から延々と語られ続けてきた話題。しかしながらデッカードは機械でした!きてな描写は特段見られない。ウォレスがデッカードに対し初めからレイチェルと性的な関係になるように仕向けられ子孫繁栄の実験とされていたとしたらどうする?という悪い冗談を聞かされげんなりするデッカードを見ると、おそらくアンドロイドだろうと考えられるが、断言される描写はない(レイチェルは4年で死んだのにデッカードはおじいちゃんになっている)。ただこれまでの流れから言っておそらくレプリカントなのだろう。はじめからケーブルとかに繋がれて充電中とか表示してくれればこんなにモヤモヤせず楽なのだが。


■評論


機械と人工知能が恋愛をする、というもはや生身の人間置いてけぼりなherの要素や、主役は自分では無いと気付いて自己犠牲ののち去るライアンゴズリンがドラゴンタトゥーやマッドマックスのようであったり、これまでのブレードランナーをリスペクトしながらも新たな要素を取り込み、決して焼き増しではなく刷新したヴィルヌーブは本当に偉大だと感じた。愛が強すぎるゆえうまい言葉が見つからないが何度見ても様々な解釈ができ、どの時代に見ても映画が掲げるテーマが響くだろう。
前作同様想像と考察の余地を充分に残している事にも好感を持てる。




いくらレプリだからと言って真顔で壁突き破るのは反則でしょう。シリアスなシーンなのにめっちゃ笑いました。