昨年に引き続き黄金期の大作映画の続編が多く散見されたが、多くは当時リアルタイムの古参客を集めるための集金メソッドでしかなく、映画界のネタ切れさえも感じさせてしまう一年だった。
が、それに心躍ってしまうのは奇しくも事実。ただの古株集めで終わっているものもあれば、今の技術を存分に活用して刷新したものもあり、ランキングにもそれは強く反映された。
2016年度が全体的に映画不振だったこともあり、今年は良作がごまんと揃っており、おそらく映画をたしなむ人たちにとっては毎週のように見なければならない映画があるような状態で見るのを諦めた作品も多いだろう。
映像コンテンツの動きがこれまでと大きく違う点として、ドラマが映画に負けず劣らずなコンテンツとして確立しつつある事が挙げられる。
もちろんfriendsや24など過去幾度となく訪れた。しかしこれまでのムーブメントと大きく違う点として①制作費が尋常では無いこと、②テレビで一話ずつ見る時代は終わったということが挙げられる。
これまでのドラマはある程度決まったバジェットで制作され、それを上回らなければ打ち切り、うまくいけば何シーズンも続くような、場当たり的な動き方をしてきた。しかし今回のドラマブームは初めから映画の制作費を上回るような巨額のバジェットで製作され、毎週一話ずつ配信されるのではなく、初めから13話までアップされるようなやり方をしている。またどんなに売れていてもシーズン4までしかやらないと初めから決めていればそこで終わるなど、ストーリーを何番煎じもして最後には既視感満載の終わり方をするようなやり方はしなくなった。ゲームオブスローンズやストレンジャーシングスなど、CGや撮影技法はもはや映画に引けを取らないクオリティとなっており、ドラマはもはや映画館で見たくなるようなクオリティだ。
またNetflixに挙げられるような、映画館での上映はせずにストリーミングサービスに止まるようなコンテンツも徐々にうねりを上げてきた。急忙を極める現代人にとって1分1秒が惜しい中映画館へ足を運ぶのは難しくなっていることもあり、まさに需要と供給のバランスが取れた結果と言える。
そのため必ずしも映画ランキングは映画館で見たものとは限らなくなって来ている。
ましてやドラマと映画の境目すら怪しくなって来た。(その境目は回数というある種人為的な縛りがあるだけである)
とはいえ良作が多すぎたこともあり、ドラマと映画の壁は一応残して置こうと思う。
<<今年度映画ランキングベスト10>>
10位 goodtime
全編ワンオートリックスポイントネヴァーの奇怪なスタイリッシュで脳幹に直接響くサウンドトラックと、LSDをキメたかのような
フラッシュバック的映像美の連続に、ストーリーがないとかそんなことはオプショナルなものでしかなく、理解するな感じろ!というサフディ兄弟の若く強いメッセージを感じられた。NYのゲットーを描いている映画は数多くあるが、あれほどまでにかっこいいわけではなく、小さな昆虫が底力で生きているのをクローズアップしたかのような絵面は強く印象に残った。
9位 メッセージ(音楽満点)
徐々に大御所頭角を現しキューブリックと比較されるまでに上り詰めたドゥニヴィルヌーブ監督のSF大作。正直ブレードランナーを後ろに控えていたこともあり、この作品を見てその結果が決まってしまうような気がしてしまいはじめは観るのに気がひけていた。
今思えばそんぞそこらの監督が撮っていれば地球が静止する時みたいなチープでああそんな映画あったなと忘れ去られていくようなクソ映画になりかねないビジュアルとストーリーを、見事に神秘性を持たせて傑作に変えた。音楽の使い方が秀逸で、これまで触れたことのないとてつもない何かと接触しているという緊張感を終始感じられた。時間という人為的な概念を外して考えるというスタイルは斬新で、後世に語り継がれる作品である事は間違いない。
8位 ネオンデーモン(映像満点)
色盲で色味がよくわかっていないレフンの新作。これもまたしょービジネスの光と闇という使い古された古紙のようなアイディアであるにも関わらず見たことのないおぞましさと美しさを表裏一体にしボコボコにされたような感じだった。
リンチ御大のマルホランドドライブでおそらくこの手のテーマのいいとこ取りは全てされたものだと思っていたが故に、まだこんなに楽しませられますかこのテーマ!と、ど肝を抜かれた。カラフルなチョコレートを振りかけた人間の臓器を金色の額縁にはめて飾っているかのような、会田誠的エログロナンセンスが◎。
7位 ガーディアンズオブザギャラクシー
前作を私は劇場で見なかった。またマーベルの金集めかと無視しており後で家で見て飛び起きた。
こいつああ傑作じゃねえか!!
冒頭から掴まれる音楽に始まり音楽から音楽に至るまでもう音楽が音楽!!
6マンチェスターバイザシー(警察署の自殺未遂演技満点)
昨今の映画は撮影技法もCGも発達しごまかしが効くようになってきている。
ただどんなに時代が変わろうが普遍的なのは演技力だ。こればっかりは何がどうなろうと見透かせる。
5ゲットアウト(全力疾走黒人)
正直開始早々にチャイルディッシュガンビーノの今年のアルバムが流れた瞬間満点にしたかった。
ホラーをいくつも見て来てこれはこう、とある程度フレームが決まりつつある中で、ただ走るだけ、ただ泣くだけがこんなにも気持ち悪く怖いのかと気がつかせてくれた。そう、下手にクリーチャーを見せたり血だらけにするよりも、当たり前が少しずれているのが一番怖いのである。99%が満足しているという謳い文句の通り、観る前は誰も期待しなかっただろうが、昨今問題視されている黒人の過保護問題を見事に汲み取ってホラーという入れ物でテーブルに並べた。調理方法、提供タイミングともに最高のタイミングで最高の結果となった。
4位 ローガンラッキー
スティーブンソダーバーグの傑作オーシャンズ11といえば知らぬ人間はいない傑作だが、
本作はそのオーシャンズ11のインスタント版といった感じだ。
無論、作りがチープだとか話がしょぼいとかそういう意味ではない。
オーシャンズと言えば完璧な計画と完璧なメンバーで敵はおろか我々まで騙し抜く。
一方こちらは最初から頼りなく残念すぎて全然感情移入しない笑
でもその不恰好な姿がなぜか応援したくなってしまうのである。
3位 マグニフィセント(胸熱賞)
七人の侍、荒野の用心棒好きからすればこれを入れないのは罪に値する。
例のごとく全然生き残らないのが最高!!
2位 IT(もうあの頃には戻れないで賞)
小学生の頃の夏休みの思い出といえばチャリで友人と地区センターに競争しにいって駄菓子くって秘密基地を作ってぐっすり眠る。宿題はやらない。その繰り返し。今思えばあれが全盛期だし誰しもがきっとそう。そしてこの映画にはそれが詰まっている。ピエロがどうとかはおまけでしかない。一番怖いのはもうあの頃には俺たちは戻れないのである。号泣である。ブレードランナーに個人的な思いがなければ問答無用に1位。
1位 ブレードランナー 2049(人生ベストランクイン)
個人的な思いが強すぎる作品。早く酸性雨の雨が降り注いで知らない言語が飛び交う薄暗いトタンだらけの世界になって欲しい。
映画については以上だが今年はドラマも熱かったのでドラマベストも。
⭐️ドラマベスト5
1位 アトランタ(人生で見たドラマでNo1)
2位 ストレンジャーシングス(あの頃には以下略)
3位 ミスターロボット
4位 ウェストワールド
5位 マインドハンター