2014年1月31日金曜日

【映画】オンリーゴッド





アメリカを追われたジュリアンは、今はタイのバンコクでボクシング・クラブを経営しているが、実は裏で麻薬の密売に関わっていた。そんなある日、兄のビリーが、若き売春婦を殺した罪で惨殺される。巨大な犯罪組織を取り仕切る母のクリスタルは、溺愛する息子ビリーの死を聞きアメリカから駆け付けると、怒りのあまりジュリアンに復讐を命じるのだった。復讐を果たそうとするジュリアンたちの前に、元警官で今は裏社会を取り仕切っている謎の男チャンが立ちはだかる。そして、壮絶な日々が幕を開ける―


映画のキーワードは二極、手、LSD、ジェラシー、懺悔。

まず主人公のジュリアンはファイティングポーズをした銅像の前で拳を握る。この頃はまだ何の問題もなくただボクシングクラブと麻薬の密売をしていればよかった。しかし兄が死んだ瞬間から雲行きが怪しくなる。いつものように縛られ娼婦の自慰を眺めることによって快楽を得ていた彼は、ふと自身の持病でもある病的な妄想にふける。それは彼のテリトリーである赤の側から、部屋を出て(娼婦は諦めたような顔)廊下をくだり、チャンの領域である青のテリトリーに足を踏み入れる。そして真っ暗な部屋に手を伸ばした瞬間、彼は腕を切り落とされる。その後彼が洗面台で手を洗っていると怪我もしていないはずが血だらけになる。その時の洗面所も青色。彼は病的な妄想癖であったが、それは同時に警告でもあった。ジュリアンは静かでどこか物哀しげな顔をしている。しかし兄は対極に暴力的でアクティブだったのだろうが無鉄砲さが仇となり殺される。弟は母が兄を選んだことにジェラシーを感じ、母に認められようという思いで麻薬の売買をし母の償いもする。しかしそれは彼にとってそれは背徳感と嫉妬を原動力にした無駄なことだと分かっていた。初めてチャンとジュリアンが対峙する時、ジュリアンは焦りを感じる。今までどおりにうまくいかず何かが起きることをいち早く察知していた。彼をつけ回し、突然消え去り、また拳で勝負を挑んでもボコボコにされ無力であることを思い知らされる。チャンがタイというテリトリーでは絶対であり、それに逆らうものは消される。それまでの絶対は母親であったが、彼自身それには疑問を抱いていた。むしろ自らを去勢するような縛りさえも感じていた。このタイの掟をジュリアンは察知し、いつしかの妄想で見た警告通り、腕を切り落とすという行為によってその掟に従い、ジュリアンは命は助かった。


この映画はアレハンドロ・ホドロフスキー監督に捧げるとエンドロールに挿入されている。アレハンドロ・ホドロフスキー監督といえばエルトポだが、正直エルトポには到底追いつきまい。しかしエルトポやサンタサングレ、ホーリーマウンテンにあるような、なんか意味分かんないけどヤバそうな雰囲気を出すということに関しては成功している。といってもまだまだ安直だが、タイ語を使う、背中から突然中国の処刑用の刀が出てくる、まっちょの男がストリップしてる、顔面やけど男の一刀両断をガキに見せつけるなど、シーンごとに持つパワーを最大限に発揮し、全体を通して筋が通っていなかったり面白くなくても強烈な印象を残す。この面ではアレハンドロ・ホドロフスキー監督に捧げることができているだろう
どのシーンに関してもキャラクターの配置や光加減、バランス、構図は絵になるものばかりでビジュアルアートでは満点を送りたい。屋台で食事する警官たちをウージーで襲撃するシーン、獅子のネオンの前でタイマンするシーン。チャンの家で子供の帰宅を待つジュリアンの構図のバランス。また音響芸術の面でも、船の轟のようなノイズを使ったり、悪い予感を察知したチャンの心境を表すような不協和音、格闘のシーンでのシンセ/テクノ、チャンのカラオケ(笑)。


レフン監督はオンリーゴッドについてLSDとしドライヴはコカインと表した。どっかのどいつが残念ながらこれはLSDをやりながら見る映画だから!監督もそう言ってるから!みたいなことをぬかしていたが直接的なことではない。ドライヴがハイになりアドレナリンが出て引き込まれるようなコカイン的である映画に対して、現実の解釈が変容し幻覚を見て、感覚が研ぎ澄まされる瞑想状態に陥るアシッドであるという例えだ。そういう感覚を味わいたければ何もこの映画を見ながらLSDをやらなくていいし、やらずともそういった状態に陥る用に作られているのだから我々はそれを純粋に楽しめばいい。


チャンのカラオケについて。制裁を下すごとにチャンは部下を集めて熱唱するのだが、どこか儀式的なオーラを感じる。全部で三回歌うのだがこれがかなりシュールな上に地味にうまい。娼婦のおじきの腕を切り落とした後の曲目は復讐の歌(マイル~マイル~\カン!/)、自分を殺そうとしたジュリアンの手先を一刀両断したあとの曲目は人と人の統合の歌、ジュリアンの腕を切り落とした後のエンドクレジットとともにお別れする曲は恋に落ちる歌。まあそれぞれ意味ありげではあるがどうでもいい。あそこは笑うシーンなのだから。上司が熱唱してるのを死んだような顔で見る部下たち。監督は不思議な雰囲気を出したかったと言ってるがどう見ても帰りたいのに無理やり付き合わされて明日の心配しだしてる部下たちと全然気づかないタモリにしか見えない。


オンリーゴッドで評価したいのはクリスタル役のクリスティンスコットトーマス。昆虫界の女王みたいな支配者かつ近親相姦、ド下ネタ連発で紹介した彼女をドン引かせるというグレートビッチマザー。



2014年1月15日水曜日

【映画】インシディアス 第二章






ソウの監督ジェームスワンとリーワネル、パラノーマルアクティビティの製作チームがタッグを組んだいわばアメリカで最強のホラーキャストが本気を出したインシディアスの続編。前作ではダースモールみたいなデビルがライトセーバーを振らずに一家を脅かすという内容で全米でかなりの興行収入を得たが続編はいかに。

ヒットしたホラー作品はほぼ100パーセント続編が作られるのが世の常だがほぼ100パーセント失敗に終わる。REC、パラノーマルアクティビティ、リング等々。正直前半はああこれ失敗したやつだと感じたが後半にかけて伏線回収や前作とリンクさせる部分などがあり、必ずしも失敗ではなかったのかもしれない。ただジャパホラのような何が何だかわからない得体の知れないものがじわじわと迫ってくるような恐怖は相変わらず単細胞脳筋アメリカ人には描けないようだ。
また名作といわれるホラーの良いところを集めてまとめた感も否めない。例えば冥界へ繋がる赤い扉やとりつかれて妻子を追いかけてドアを消火栓でぶち破る父のシーンなんかは、シャイニングの血があふれだす真っ赤なエレベーターと完全に気が狂ったジャックニコルソンだし(ぶち破った時におコンバンハ!って言ってたら満点だった)、悪霊のバックグラウンドが母親に吹き込まれて女装して女を惨殺しまくるパーカーという男っていう設定の時点で完全にヒッチコックのサイコだし(実際母親はミイラっぽいビジュアル)、途中なんかもホラー界の名作吸血鬼ナイトオブザリビングデッドエクソシストなどオマージュというかほぼまんまやんなシークエンスが山のよう。それも一番山の部分ばっか持ってきたばかりに、結局平坦で何だこれ??な流れになってしまっている。
振り返ると突然花嫁の恰好した死体がぞろっと並んでるシーンは、会場の皆さん結構ビクってしてたけど、CONDEMNED2というPS3ゲームの一部分。ちなみにこれは結構名作。嫌々プレイしてたのはいい思い出。
またサイレントヒルなんかも感じられるシーンもありあげたらきりがない。


もうひとつジャパホラに及ばない点が、悪霊の描写がガサツすぎる。今回は白塗りの婆と婆の若かれし頃とその息子(女装癖)が悪霊なのだが、首を絞めるのはいいとして、ビンタで現世の人間を吹っ飛ばして気絶させる。お前はマンオブスティールのゾッド将軍かといいたくなるくらいパワフル。肉ばっか食って銃っぶっ放してりゃあああいう思想になるのも無理はないと思うがいくらなんでもアグレッシブすぎ。いつ目から光線出すのかハラハラしてしまった

良かった点はまず前作とのリンクがあったことと前半の伏線回収。あー確かにこんなシーンあったわ!と懐かしい気持ちにさせてくれる。ピアノ、ノック、ジョシュのインタビュービデオ等。
あと登場人物がみんな馬鹿。良い感じにみんなドンくさいが不思議と誰も死なない。
そしてちょくちょく写る意図的じゃない感出した心霊シーン。何気ない会話のシーンだったり廊下を歩いてる時に一瞬映ってたりして遊び心がある。

総合的に見れば名作をまとめただけなので他のホラーを一切見たことがないという人には新鮮で楽しめるかもしれない。

2014年1月5日日曜日

【映画】LAギャングストーリー



1949年のロサンゼルスを舞台に、ギャングと警察官の抗争を描いたクライムアクション。ドラッグや銃器取引、売春で得た金を使い、警察や政治家をも意のままに操る大物ギャングのミッキー・コーエンは、自らを「神」と豪語し、ロサンゼルスを支配する。しかし、そんなコーエンを打ち破るべく、6人の警察官が立ち上がる。警察当局は一切の責任を負わないという命がけの任務に就いた6人は、警察官という素性も名前も隠し、コーエン率いるギャング組織へ戦いを挑む。



いろんな映画のオマージュを感じる。仲間を集めていき腕利きのガンマンやメキシコ人、ちょっと扱いにくい若造やおじさんなどメンバーが揃っていく経過は荒野の用心棒でしかないし、黒人警官が情報屋を追いかけポルノ撮影現場に落下するところはダーティハリーと全く同じ。また全体的に名作アンタッチャブルを匂わせる。
ストーリーややり方は真新しいことなんて一切なく、今までどおりのやり方でド直球だ。しかし50年代ロサンゼルスの繁栄と影、クールで皮肉なセリフ、見ごたえのあるシーンがあるおかげでなんてシンプルで面白い映画なんだと感じるようになっている。
一番思ったのはすごくゲーム的であるということ。それもロックスターの作るようなキャラクターここに味があって、またキャラクター一人一人にストーリーがあり、アイテムやロケーションに妥協がない。(実際ロックスターが作った50年代がテーマのゲームは失敗だったのだが)


ジョシュブローリンの渋い熱血漢デカっぽさも良かったし、ショーンペンの悪役もドはまりで間違いないと感じた。ライアンゴスリングも相変わらずマイペースクールキャラでドライヴがもし50年代だったら的なノリ。エマストーンの青い目との赤いドレスのマッチングもナイス。

かっこいい男っていうのはこういうところなんじゃないかと感じさせる一品。

ロサンゼルスいきてー

2013年12月27日金曜日

【映画】ゼログラビティ







2001年宇宙の旅が公開された1968年からもう40年以上経つ。当時まだ月面着陸すらしていなかった人類にとってその内容は衝撃的なものであった。そして月面着陸してから再び驚くこととなる。なぜならまだ誰も見たことのなかったはずの宇宙をすでにキューブリックは映像化娯楽化していたからだ。驚くべきことは当時まだCGが十分に出来上がってなかった事はおろか電卓すら黎明期の時代。あれらの宇宙の映像は計算尺により人の手で造られたというのだ。
では昨今の科学技術とCGの進化を使い2001年宇宙の旅を再構築し再生させるとどうなるか。
それは2001年宇宙の旅のスタイルを適用しながらも形質的には全く違う新たな宇宙を創造した。キューブリック的にいえばスターチャイルドの誕生である。


ゼログラビティにストーリーはないと言っても過言ではない。一応あるがサンドラブロック扮する博士が宇宙ステーションに新たな技術を埋め込もうとするもソ連の使わなくなった人工衛星が破壊され、その破片が尋常じゃないスピードで移動し破片によってステーションは破壊され宇宙空間に投げ出され漂流してしまうというなくてもあっても変わらないようなもの。キャラクターのバックグラウンドもあるけどないようなもの。キャラクターも二名(エドハリスは声のみの出演)。フィールドは宇宙のみ。
これだけ簡素化しておきながら、どうしたらこんなに世界的に評価される映画が作れるのか。


まず第一にカメラワーク。
トゥモローワールドを見た人なら分かると思うが、主人公が最後の子供を保護して集落から逃げる車のシーン。何度見てもいったいどうやってこれを撮ったんだ?と不思議でしょうがなかった。そのメイキングでそのシーンを確認したが驚くべき手法で撮影していた。
今作ゼログラビティにおいても撮影方法にはかなり凝っているらしく、4096個ものLEDを配置した196枚のパネルで構成された「Light Box」の中に入ったり(液晶に囲まれた箱のようなもの)、12本のワイヤーリグで吊るされた状況、また車の製造工場で使うアームのようなマシーンを人間につけ、宇宙空間に放り出される重力化にある地球で無重力感を見事撮影することに成功した。
また全体を通してカットが少ない。最大で15分シーンが途切れない時もあった。これは通常ならば退屈と感じさせるが、この場合より一層リアルに危機感を感じさせることに成功している。

第二にVFX。
時代は2013年。もはや2001年から12年もたってしまったわけだが当然ながらCG技術の進化は驚くべきものだ。エンドクレジットのCG関係者だけでも300人近くの名前が挙がっていた。あれだけのクオリティを体現するには必要な人数だろう。予告を見るだけでもわかるがホントに宇宙でロケやってんじゃないの?と思うほどにリアルでまるでディスカバリーチャンネルを見ているようだ。途中FPSのように一人称になるシーンもあり、宇宙体験ができる90分を1800円ばかしで味わえると言うべきだろう。ちょうどディズニーランドやユニバーサルスタジオにあるアトラクションのようなものだと想像してもらえればいい。
宇宙の描写やステーションがCGなのは間違いないだろうし、まったくCGには見えなかったのだが、一番驚いたのはさすがにここはセットだろうと思っていたシャトル内のパーツや壁などもCGだったこと。言うならばこの映画でCGじゃないのはサンドラブロックとジョージクルーニーだけ。それを知ってみるだけでも大分面白さが変わるだろう。



冒頭から2001年宇宙の旅を彷彿とさせると多く述べるのには理由がある。
例えば原点回帰の描写。サンドラブロックが危機を逃れ何とかステーション内に入り、宇宙服を脱ぎ疲れで脱力するシーン。身体を丸めまるで胎児のようなポーズをするのだが、おそらく2001年~のラストに主人公が新人類として生まれ変わるというスターチャイルドの描写のオマージュだろうだろう。劇中ライアンは過去の娘を失ったという自己の束縛から解放されるという意味も込められている。また2001年~では黒い石板のようなモノリスが人類を導き木星を指したが、ゼログラビティはジョージクルーニーが導き手の役割をしている。最初から最後までジョージクルーニーは実は宇宙人だったオチなんじゃないだろうかと思うほどに危機的状況にも落ち着いた指示を出しカントリーを聞きながらおしゃべりばかりしている。その様子は神々しさや無機質さすら感じさせ同時にモノリスを思わせた。またキュアロン監督はラストの海のシーンを羊水スープと呼び、40億年前人類が宇宙からの微生物が海に溶けだし進化を経て地上に発つという一連の流れであると同時に再生を意味すると説明した。
2001年もそうだが生命や再生を連想させるメタファーが多くあり、それは海でありまた胎児の姿、へその緒のように身体に巻きつくロープ、水、アニンガの子供(Aningaaq)。それらに気づくことができれば映画をより一層楽しめる。



宇宙からすれば人間なんぞ塵っカスのようなもんで戦争しようが問答しようがお構いなしに冷酷に無表情でただ存在する。冷酷ですら無いのだろうが尋常じゃなく深く恐ろしい。下手なホラーやスプラッタよりも。
それを音でうまく体現できていると思う。無音のシーンが多くあり、そのたび宇宙は無音なんだと毎回気付かされる。またスティーブンプライスによる音楽が秀逸。2001年宇宙の旅ではクラシックを使用し今までの宇宙映画の常識を覆したが、今作では電子音、それも実験音楽的なノイズを多用し、不規則で重苦しく、宇宙の広大さや無表情なイメージを連想させるシーンにあった楽曲を使用。
またフワフワと漂うアイテム達にも遊び心があり、中国のステーションには卓球とピンポン、破滅したISSにはバックスバニーのキャラクターなどともっと目を凝らせば色々ありそうだが3Dだったせいもあり物を非常に捉えにくい!
しかしこれは絶対的に3Dで見るべき作品である。欲を言えばIMAX。

総合的に良いの悪いの?と聞かれればすげえよ!と答える。しかし何度も見たいかといえばそうでもない。衝撃はどうやら一時的なもののようだ。しかし一度は見る価値があるとだけは言っておこう。



最後エンドクレジットに影響を受けた監督みたいな欄にデヴィッドフィンチャーとかある中デルトロの名前が笑

2013年12月25日水曜日

【映画】コンテイジョン





いままでインフェクテッド系の映画と言ったら28日後のような感染し凶暴化し世界は終焉を迎えるみたいな流れが主流であった。所謂ゾンビというジャンルになるわけだがこの映画は凶暴化はせず淡々と感染の部分をクローズアップし、よりリアルに我々の生活に十分起こりうるウイルスの危険性、またそれに伴う人間の心理を映している。
最近スマートフォンでは感染株式会社というアプリが一部で流行っている。それは自分でバクテリアやウイルスをまず選びそれを遺伝子操作や症状などの変化させ保険機関にワクチンで制御されないよう食い止めるという言ってしまえば不謹慎なゲームなのだが、まさにそれの映画化と言ってもいい。残念ながら映画ではウイルス側は負けてしまうが、スペイン風邪や黒死病がごとく治療法が分からず人々は混乱し何千万と言う人間が死ぬ。近年だと豚インフルやSARSなどが記憶に新しいが、目に見えないミクロの殺人鬼ということで見ているこっちもうがいしたくなる映画だ。

あらすじ
香港出張からアメリカに帰国したベスは体調を崩し、2日後に亡くなる。時を同じくして、香港で青年が、ロンドンでモデル、東京ではビジネスマンが突然倒れる。謎のウイルス感染が発生したのだ。新型ウイルスは、驚異的な速度で全世界に広がっていった。
米国疾病対策センター(CDC)は危険を承知で感染地区にドクターを送り込み、世界保健機関(WHO)はウイルスの起源を突き止めようとする。だが、ある過激なジャーナリストが、政府は事態の真相とワクチンを隠しているとブログで主張し、人々の恐怖を煽る。その恐怖はウイルスより急速に感染し、人々はパニックに陥り、社会は崩壊していく。国家が、医師が、そして家族を守るごく普通の人々が選んだ決断とは──?

映画はなぜかDAY2(二日目)から始まる。あれ序盤スキップしちゃったかな?と疑問に思うが心配ない。そのからくりは最後わかる。そんでもってあーなるほどね!と声を漏らす。全体的に言えることなのだが終始無駄がなく、無駄なシーンは三秒ほどのカットの繰り返しをテクノBGMでPVのように仕上げながらさらっと進む。そのためストーリーの重々しさや政府機関などのつまらないと感じさせるエッセンスを飲み込みやすくしてくれるスマートな作り。それが故に拘束で広がっていくパンデミックの恐怖と民衆の恐怖や噂の拡散速度を表す作りにも加担してると言えよう。しかしどこか冷静なまでに第三者的視点で全体を見ている感は否めない。


コンテイジョンで声を大にしてソダーバーグが我々に訴えかけるものそれは、病気<FLU>よりも恐ろしいものは噂<RUMAR>であり、感染は病気よりも遥かに早く、病気よりも恐ろしい暴動という症状を引き起こす。
また近年インターネットメディアの発達によりそのスピードは恐ろしく早くなった。
メディアの信用は地に落ち、ジュードロウ演じるフリーランスのライターのような根拠のないネットブロガー達が人々の恐怖を煽り事態をさらに悪化させるあたりが非常にリアル。
ロメロがいち早くダイアリーオブザデッドで掲示していた信憑性の定かでない情報の嵐の危険性をウイルスが人という媒介を通して繁殖するように、ウイルスという媒介を通してこの映画は我々にその危険性を伝えている。

マットデイモンは唯一抗体を持っており殺人ウイルスに感染しない。だからと言ってヒーローのように政府と戦うわけではなく何もできず立ちつくしまた周りの人間と同じように他人の家に入り銃をパクる。結局最後まで何をするわけでもなく娘と普通の大衆サイドの生き方をする。思うのはやはりこの役、マットデイモンじゃなくてよくね?

余談だがダークナイトでバットマンにアクロバティック強制連行させられた香港のラウ社長がコンテイジョンに出てくるのだが、ラウ社長はマリオンコティヤール扮するCDCの調査員を拉致する。ダークナイトシリーズを見ている人にとっては謎の展開だろう。






最後握手という今まで最も恐れられていた行為をすることにより人々はパニックに陥っても懐疑的になり過ぎてはならないというメッセージを送る。
おそらく誰しもがこの映画を見た後狂ったように手洗いうがいをするだろう。見るもの全部がばいきんだらけに見える不思議!!

2013年12月16日月曜日

【映画】ドライヴ

 



宗教画のような優しい光と物騒なまでに静かな流れがおぞましい決断を今か今かと急かす。
フレームとしての美学で映画を楽しむ私にとってこの映画はかなり高評価。どのシーンをとっても絵になり構図、光、表情やバランスが計算し尽くされており、見応えとしてはかなりある。ストーリーはありがちな復讐劇であるが、それをも忘れさせるようなフレームと、ラテックス素材のグロ描写がこの映画の評価を高めている。
車内から撮った街を流すシーン、一昔前に流行った空撮、カメラワークが秀逸で、どのシーンも切り取って絵になるフレーム。
バイスシティーにそっくりなピンクの筆記体タイトルでオープニングはまるでグラセフ。
選曲もどこか80'sを思わせるポップチューン。寂しくも切ない恋心を歌うような曲がストーリーのやるせなさを物語る。
説明や無駄なシーンを一切省いてるのがスムーズでとてもいい。
またライアンゴズリングが全然喋らず表情で演技するのも高評価。まるで冷たい石のように表情はなく、睨みつけるその目は温度はない。スタントマンと裏の顔を使い分ける演技に脱帽。
なにも言わない静かなシーンが多く、心の奥底にある感情を楽しめる。
また質屋強盗を男だらけではなく女が一人いるってのも斬新でいい。(ハメられるけど)(そっちのハメるじゃない)
モーテルでマフィアに襲われるシーン。脳みそが豪快にぺろりんちょしたり、スカーフェイスばりにバスルームでの流血ファイトするあたり惜しみなく映してくれて評価大。
眉間に弾丸当ててハンマー振りかざすシーン なんかはかなり記憶に残るしドライブと聞いたらあのシーンを連想する人が多いと思う。
またエレベーターで追っ手をストンプしまくって顔面を粉砕するシーン。それを見ていたマニガンがドン引きしてドアが閉まる、二人に壁が出来る、みたいなのもわかりやすくていい。おそらく付き合ってみたら思ってた人と違うパターンの最上級。
リズオートラニのオーマイラブと共に八ッ墓村のごとく不気味なフェイスマスクをして殺すのもかなりそそる。
上記にあげたように印象に残るシーンが沢山あるため、ストーリーは単調でも、何度でも繰り返し見たくなるような作品。絵画もいいものは繰り返し見たいから壁に掛ける。それと同じ事だ。
あとは光の使い方。
顔に反射する赤い光、エレベーターで一度消えてまた光るライト、カラヴァッジョの宗教画のような救済を表すがごとく差し日を浴びる少年など、光が各々の感情、情景、ポジションを表している。結果的に光が効果的にシーンを盛り上げてるおかげでフレームが絵画のような美しさを解き放つ。
ダメな点としては全体を通して静かすぎる。ゴズリングの静かな煮え滾った怒りを表しているのかもしれないが、静かすぎて見てて息苦しい。静寂は耳にうるさいとは言うが少しの環境音だったり、細かいノイズ(例えば悪の法則の不快な低音やハンスジマーがよくやるバイオリンの細かい音など)があった方がもう少し違和感なく見れたかもしれない
 

 


2013年12月13日金曜日

【映画】マチェーテ

 




アメリカが肥満と対中東問題以外に抱える大きなイシューの一つが不法移民問題。多くの移民が低賃金で働くためメキシコから流入するためアメリカ人の雇用体制は崩壊する。しかし同時にアメリカの多くの企業はWASP以外の労働者によって地盤を支えられていると言っても過言ではない。事実、白人はお高くつくのだ。
そんなアメリカの時事ネタを混ぜ込みくだらないの一言で終わらすのもよし、血糊とラテックス満載で最高!と甲高い声を出すのもよし、なエクスプロージョンムービーがマチェーテだ。プラネットテラーとデスプルーフの二本立てで放映されたグラインドハウス(グラインドハウスについてはデスプルーフ参照)の偽CMとして流れたのがこのマチェーテであり、本編の二本よりも評価が高いんだからびっくりである。また2014年公開の続編マチェーテキルズには歌手レディガガが出演するなどかなり注目度の高い作品になってくるだろう。
じゃあ今作マチェーテはどんな内容なのかと言えばマジでしょうもない話。一応ストーリーとしては
メキシコの連邦捜査官のマチェーテは、マチェーテを愛用して犯罪者を狩る凄腕の男だった。だが、その強い正義感ゆえに麻薬王トーレスと衝突し、妻娘を惨殺される。
それから3年後、マチェーテはアメリカテキサスで不法移民の日雇い労働者をしていた。ある日、マチェーテはブースという男から不法移民嫌いで知られるマクラフリン議員の暗殺を依頼される。
みたいな本筋があるが、主演のダニートレホが銃ぶっ放して美女を抱き、メキシコ人の星だ!みたいなノリがあるだけ。そこを楽しめるかどうかで分かれてる。無駄に出演陣が豪華というのはおそらくこの映画に対して言うのだろう。ジェシカアルバに始まり、ロバートデニーロ(よくこの映画出たなってくらい雑な扱い)、天下のセガールにリンジーローハン(乳要員)、タンクトップと銃が似合いすぎるミシェルロドリゲスと出演陣だけでエクスプロージョンフィルム感皆無である。
 
 一番びっくりしたのはロメロ作品でゾンビのメイクアップを施していたトムサヴィーニが殺し屋として出演していたこと。イタリア系だからか分からないが出たがりなのか。

キャストの死にざまやキャラクターはどれも濃すぎるくらいで観終わった後胸やけに似た症状を引き起こすので、一緒にアイスエイジとかを借りることをお勧めする。



グロ描写は多いがへぼへぼなので見ていて何も感じない。おまけに全く感情移入しないので、終始あー死んじゃったー(棒)くらいのテンションである。おそらく感情移入する前にみんな撃ち殺されるからか。

評価すべき点としてはメキシコ人がどんな暮らしをしているか、どんな不当な扱いを受けているかということが良く分かる資料的作品であること、またそれを利用した権力者が多くアメリカにいるということが良く分かる。キリスト教原理主義者だったり、ブッシュのオマージュであろう議員であったり、ナショナルライフルアソシエーションみたいな自警団だったり、もはや黒人差別映画なんかの時代は終わり、ラテンの革命映画がヒットする時代が到来しつつある。それくらいにアメリカは多くのメキシコ系をテキサスから流入しているということだ。

事実白人の人口を40年後にはヒスパニックが上回るという研究結果も出ているしWASPとしては今すぐにでもマチェーテを持って追い出したいだろうな。まあ腹の肉がつかえて動けないだろうが。