1849年、太平洋諸島。若き弁護士に治療を施すドクター・ヘンリー・グース(トム・ハンクス)だったが、その目は邪悪な光をたたえていた。
1973年のサンフランシスコ。原子力発電所の従業員アイザック・スミス(トム・ハンクス)は、取材に来た記者のルイサ(ハル・ベリー)と恋に落ちる。そして、地球崩壊後106度目の冬。ザックリー(トム・ハンクス)の村に進化した人間コミュニティーのメロニム(ハル・ベリー)がやって来て……。
いつの間にかウォシャウスキー兄弟からウォシャウスキー姉弟になっていたふたりとトムティクバ監督の三人によるドラマやアクション、ミステリー、ファンタジー、ラブストーリーなどさまざまなジャンルを内包して描く壮大なスペクタクルSF。
鑑賞してまず感じたのは、クリストファーノーラン監督の傑作"インセプション"と同じ多層構造で物語を複雑化するものの、最後にはすべての物語が繋がり収束するだろうという予測だったが、インセプションと違い、クラウドアトラスはそれぞれの時代を生きる人間たちは本質は同じでありながら全く別のキャラクターであるため理解するのに記憶力と柔軟な脳を必要とすること、また一度観ただけではすべてを把握することは不可能であるということだ。
クラウドアトラスに存在する各時代は以下の通り
1. 1849年の南太平洋
2. 1936年の英国
3. 1973年のカリフォルニア
4. 2012年の英国
6. 2144年の韓国ネオ・ソウル
7. その数百年後、世界大戦後のハワイ島~宇宙
これらの時代をコマごとに交差し物語は進んでゆく。
クラウドアトラスで最も評価すべきが幾つもの時代が交差するにもかかわらずすべての因果関係がしっかりと繋がっており、また一つ一つの時代が濃密に作られていること。
例えば2144年のネオソウル一つだけ見ても、ソイレントグリーンのような文明の過剰発達により生産のあるべき姿が脅かされ政府に民間が決起するなどちゃんとしたストーリーが出来ており、バラして観ても楽しめるぐらい作り込まれている。
補足。ソイレントグリーンでは文明の発達により温度が上昇、地球に植物が生えなくなり食べ物が確保されず、ソイレントグリーンと呼ばれる非常食を食べていたがそれの原料は老人ホームで死んだ人間だった。そのためクラウドアトラスでも2012年に作家が兄に強制的に老人ホームに入れられた際に”Soilentgreen is people!”と叫ぶのだ。そして2144年のネオソウルではソイレントグリーンと同じような恐るべき現実をソンミは目撃することとなる。要チェック。
補足。ソイレントグリーンでは文明の発達により温度が上昇、地球に植物が生えなくなり食べ物が確保されず、ソイレントグリーンと呼ばれる非常食を食べていたがそれの原料は老人ホームで死んだ人間だった。そのためクラウドアトラスでも2012年に作家が兄に強制的に老人ホームに入れられた際に”Soilentgreen is people!”と叫ぶのだ。そして2144年のネオソウルではソイレントグリーンと同じような恐るべき現実をソンミは目撃することとなる。要チェック。
次に評価すべきはキャラクター。クラウドアトラスに登場するキャラクターは一つの時代だけでも平均して約10人。6時代あるので60人だ。しかし俳優一人が六役こなしていたりするので意外と混乱する事はないし、これ誰々じゃん!など俳優を発見するという楽しさもある。ヒューゴの分かりやすさは尋常じゃないがヒューグラントの絶妙な特殊メイクが意外と気がつかない。(この二人は全時代に登場)ペドゥナの白人はちょい無理を感じたが。
これだけのキャラクターがいるアンサンブルキャストは多分今までにも類を見ないだろうが、個性が一人一人あるので混乱する事はないだろう。
あと感じたのは1億ドルという半端じゃないバジェットを感じさせるクオリティ。映像美はもちろんのこと、俳優の演技は妥協が一切感じられないし、衣装や都市のデザインから小物、音響、撮影技法まで細かくウォシャウスキーのこだわりが感じられる。移民、それもヒスパニックや朝鮮系を近未来に出すのはもはやウォシャウスキーの特色とも言えるが各時代に救いようがあるあたりはランローラランの監督であるトムティクバの色が感じられた。撮り方も独特なシーンがあると感じたが撮影はランローラランのフランクグリーベなのね。横スクロールだったりスターウォーズのような荘厳なショットが多く見応えがある。
奴隷解放運動、 市民運動、 レプリカント解放運動、 惑星移住を通して、 弱肉強食と愛の戦いが描かれる。すべての要は愛であり、愛はあるべき序列を破壊し、次なる未来を映し出す。 境界線は越えるためにある、 境界を越えることを想像すればそれは可能になる、 と。 そんな宿命を持った者には流れ星のアザがある・・。流星のアザこそが時代のキーであり、時代の未来なのだ。
命は自分のものではない。子宮から墓場まで人は他者とつながる。過去も現在もすべての罪が、あらゆる善意が、未来を作る。ペドゥナが革命の前に言う言葉だ。本当にその通りだと思うし、その言葉のきっかけは2012年に老人が作り上げた作品の映画化、またペドゥナはその後革命の母として2144年には神として讃えられている。日常の思わぬところにキーは落ちている。そんな事は当たり前だと分かっていても、意外と気が付かない。すべては因果関係で繋がっており、またそれは生まれた瞬間から決められたストーリーなのだ。私が今コーヒーを飲む。このコーヒー好きは彼女の影響だ。眠れなくなったので勉強をする。結果としてテストは受かり、仕事をする。仕事の業績が良く管理職に就く。すべてはコーヒーが好きでなければおきえなかったかもしれない。しかしコーヒーを飲んだのは偶然ではなく必然なのだ。
命は自分のものではない。子宮から墓場まで人は他者とつながる。過去も現在もすべての罪が、あらゆる善意が、未来を作る。
それを考えてから再びこの言葉を読めば意味は理解できるだろう。
一言で言うならばこの映画はすべての店の質がとんでもなく高いフードコートみたいなもの。
三ツ星フレンチから金賞を取った中華、ミシュランイタリアン、銀座の寿司屋。
それぞれが完成されていて究極。それが同じフロアで楽しめる。さらに言うならばそれぞれのシェフは全部同じ人。それがクラウドアトラス。間違いなくSF作品の歴史を変えるような偉大な作品であるし、かつて存在したSFの良いところを少しずつ生かしたような名作。この映像美は映画館で観る事をオススメする。ただ三時間と非常に長いので事前にトイレに行っておく事をオススメする。
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