2014年にサンダンス映画祭を沸かせたとされる今作は、『地球、最後の男』のウィリアムユーバンク監督最新作。ネタバレあり。
あらすじ
MITに通うニックらは、学校のPCにハッキングしてきた謎の人物ノーマッドの正体を追っている時に、何者かに拉致されてしまう。気が付くと、ニックたちは政府の隔離施設に監禁されており、「何か」と接触したため感染が疑われ、隔離されることが告げられる。不審に思ったニックは、仲間を連れて脱出を試みるも、自分の体に異変が起きていることに気づく。そして、追いかけてくる研究員たちによって窮地に立たされたとき、思いもよらない力が発動する。
まずキューブリックとリンチを継承、崇拝している感が尋常じゃない。
しかしIQが足りなかったのか、なんだかまったくわからない置いてけぼりな映画になってしまった。
キューブリックの良さは映画の随所にちりばめられたエッセンスを個人が回収し持論を炸裂し合って議論させ合い、おまけに答えは教えてくれないというドSっぷりが愛される理由だと考えている。
リンチの良さは説明描写がなさ過ぎてなんだかよくわからないけどこれは良いと言っておいたほうがいいんじゃないかと思わせるセンスと味にある。
この二人に共通するのは徹底した説明描写とセリフのカットにある。
セリフや説明描写はどうしても安直で安っぽく、こども向けな印象を与える。近年日本の映画産業はこぞって説明描写の多様で安価な映画が大量生産されている。これは日本の映画を見る人間が難解な作品よりもわかりやすいものに流れやすいということもあってだろう。
話は戻るがウィリアムユーバンクはこの二人の真似をしたくてたまらなかったんだろう。説明描写を省くところだけ真似してしまった。白で統一した隔離施設とか、防護服は宇宙服に見える。さかさまに見るとデイモンがノーマッドとかもろにシャイニングのレッドラムじゃないか。結果としていい素材を揃えたにもかかわらず、何が言いたいのかわからないという結果になってしまった。
良かったところとしては青春とSFを織り交ぜたところだろう。どこか昔の日本の漫画を思わせるような題材に愛着が湧く。主人公のラストも完全に大友克洋の『童夢』だったしね。
複雑な主人公たちの感情を感染というテーマとリンクさせ張りつめた緊張感を出していたのがよかった。
後は撮り方。近年のPVで多用されるスーパースローであったり、これでもかといったアップのカット
がため息の出るような美しさと若者の青春をよく映せていたと思う。キューブリックを真似した一転透視図法が8割ほどだったがB級にありがちなPOVはそこまでなかったので質が落ちなあかったのではないかと考える。
とにかくあまりにも謎が多すぎるためこじン的な考察を書き連ねる。
①腕に刻まれた"2,3,5,41"という数字
劇中ではタスト1だからエリア51なんだ!なんてセリフがあったのでそこは合点したが、この羅列に意味があるのではと思い検索してみたがはっきりとした答えは出ず。レセプターを介する細胞間の基本情報認識にシグナル伝達というものがありこれが近い気がした。あとは創世記の箇所と、EXEファイルのウイルスを防ぐためのファイル?とかいうよくわからないものもありもやもやはあまり晴れない。
②本当に通気口から話したのか?
この施設にはお友達はいなかったよというセリフ。結局なんで話せたのかわからなかったがお友達のほうも通気口にいるなんて...みたいなセリフからしてお互い気づいていないよう。無意識にテレパシーみたいな機能が備わっていたのか?
③マジ基地ババア
途中車で拾ってくれるキリスト教原理主義的ババア。デイモンに尋問され鼻血を垂らしながらバグる様子はこいつも主人公たちと同じように感染したのか?と思わせるが最後主人公たちは感染したんじゃないと知るので、このばあさんはなんだったのかという話になる。あの宇宙コロニーに用意された人間型アンドロイドか(でもそれなら撃ち殺す必要がない)、昔連れてこられた人間か、主人公たちのように移植されたが適応されなかった住人化のどちらかだろう。ほかの住人もあまり描写がなかったため、あいつらはいったいなんだったんだという話になる。
④牛のシーン
デイモンたちがチャンバーのようなスペースに牛を入れて何か実験をするシーンがある。おそらく主人公たちの能力を試しているのだろうが、椅子のようなものが飛んでくるだけで牛は無傷だし疑問しかない。どういう解釈をしても合点がいかない。
⑤彼女
彼女は何の能力を移植されたのか最後までわからない。背中にあるプラグの差込口みたいなものが確認できるくらいだ。でも最後までここから逃げなきゃみたいなセリフはないし、施設に連れ戻されるところから彼女だけはもう受け入れていたのかと思ってしまう。
ほかにも欲しい能力が手に入ったのかとか疑問は残るがあまりにも監督がカットしすぎたのでどうしようもない。
音楽と映像とローレンスフィッシュバーンのアンドロイド感は最高でした。
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