2016年3月16日水曜日

【映画】マネーショート








事前に内容が難しいという事は聞いていたので、マイケルムーアのキャピタリズム“マネーは踊る”を見て勉強してから臨んだ。

本作で感じたのは、サブプライムローン資本主義のメカニズムから避けては通れないガンであり、人は有史以来目の前の欲に勝てるほど強く作られていないということ、金融界では(あるいは万物は)昨日までの当たり前は瞬きした瞬間に当たり前ではなくなりうるということ。

難しい用語を理解したところで感じることは理解していない状態と何も変わらない。この映画は誰が見ても異常な世界が、少し前に存在していたということを痛感する。

そして一時的な処置を施しただけで、それはまたすぐに発生し得る。

何故なら人は欲に勝てるほど強く作られていないからだ。

サブプライムローンについて理解できない人はおそらく多い。自分もすべては理解していないが自分なりに分かりやすい例を。

2005年にSupremeというブランドが爆発的に人気が出た。店は出せば売れるし、買った人は買値より高く売ることが出来るという夢のような服だった。しかしSupremeは元値が高い。庶民には手が届かない値段だ。だから人々は銀行にお金を借りてSupremeを買った。収入が安定してない中学生ですら金を借りて5着も買った。
いずれ値段が上がるという事で証券会社はSupremeを売る権利(ローン)を買い取った。
証券会社はさらにそれをいくつかまとめてレベルの高い商品(AAA)としてリリースした。しかし実際中身は支払い能力の低い日雇い労働者やストリッパーのローンでありBやBBBというクソみたいな債権で出来ていた。
そしてブームはいずれ去る。Supremeは作られ過ぎた。2007年にバブルが弾ける。
何着も買われたSupremeは差し押さえられ、証券は紙クズと化した。
証券会社は当然見返りのない紙クズを前に呆然とし破産した。
本来は証券は暴落した時の救済措置として保険(CDS)を買うことが出来るのだが、Supremeは安定したブランドという事で誰もCDSは買わなかった。
しかし先見の明を持った1人の男が大量の金をSupremeのCDSに注ぎ込んだ。その考えをいち早く事態の異常性に気付いた数人の変人に知れ渡り、CDSを買い込んだ。
結果として変人たちはSupremeを信用しなかったが為に大量の金を手に入れた。
当たり前になる事はとても恐ろしい。
平和がある時急に脅かされたら?収入がある時途絶えたら?電波が飛ばなくなったら?
それに対する処理を私達はしているだろうか?
忘れた頃に災害はやってくるとは言ったものだ。

フォックスキャッチャーでスティーブカレルはこれまでのコメディアンの仮面を取って代わりに鼻をくっつけておぞましい資産家を演じた。
本作でも兄を亡くして疑心暗鬼になるヘッジファンドを巧みに演じている。
毎度肉体改造で役者魂を燃やすクリスチャンベールは孤独な金融とレーダーとしてアスペルガー的で表現が下手くそなキャラクターを絶妙に演じていた。中でも好きなのは歯を磨いてゴミ箱にペッしたり、メタリカを爆音でかけながら裸足でウロウロする姿。エキセントリックで魅力的だ。ただ単に激昂したり喚いたりする役よりもはるかに難しかっただろう。

本作はアメリカの過去と国民性を巧みに反映する良い材料だ。マイケルムーアのボーリングフォーコロンバイン、アメリカンフードネイション、マネーショートさえ見ておけば、アメリカの根底にある”恐怖”が理解できるだろう。

俺もそろそろ Supreme 売るかな〜

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