2013年3月6日水曜日

【映画】レック




スペイン産ゾンビ映画。封鎖されたアパートの中で広がっていく恐怖を描くメタ・ドキュメンタリー、モッキュメンタリー。

消防局に取材に来たカメラマンとリポーターは平和な消防署の仕事を番組で取材していた。いい画が撮りたいクルーはアクシデントやベルがなるのを平和な消防局で期待していた。夜もすっかり更け、もうアクシデントは起きないと諦めていたとき、突然警報が鳴る。クルーは待っていましたと言わんばかりに消防隊と同行する。事件はアパートに女性が閉じ込められたとのことだった。駆けつけるとすでに警察が来ており、住民に話を聞いているところだった。どうやら事態はただ事ではないらしく女性の叫び声は普通じゃなかったと話す住民。警戒しながらも閉じられたドアを破り突入する警察と消防隊、取材陣。中には長い通路とその先に老婆がたたずんでいた。もう心配ないと声をかけ老婆を保護しようとすると、突然警官が老婆に噛まれ事態は急変する。負傷した警官を病院へ運ぼうとするとアパートの入り口は完全に封鎖されており、彼らは悪魔の巣窟に閉じ込められた。
外から警察が封鎖したとスピーカーで呼びかけしまいには衛生部隊が来るまで待機せよとのこと。何のことかわからずパニックに陥るアパートの中にいる全員。やがて衛生隊が到着し死体を調査する。すると死体が起き上がり襲いかかる。逃げ場のない恐怖、終わりのない地獄が始まる。

 

極限状態の人間の心理状態を、見事にPOV(point of view shot)によりリアルに再現している。例えばゾンビの発生源について住民があらゆる濡れ衣をお互いにかけ始めるシーン。扁桃腺の娘が原因だとか、日本人の住民の年寄りが悪いだとか(結局最後まで爺は出てこなかった)、過去に起きた核実験の影響や犬のせいだと。女性はやはりヒステリーになり他人を恨み、老人は核実験などという時代を恨む。このアパートの住民は満遍なく世間の人間のタイプを住まわせていて、もしこんなことが起きたらこいつはこういう反応するよねという監督の遊び心が満天。見事あらゆるタイプの極限状態での反応を映し出すことに成功した。日本人に対するスペイン人の中国人とごっちゃになったようなイメージも見事に映し出されている。実際白人にとって黄色人種はワーワー騒ぎ立て、いつも怒っていて、生で魚を食うような連中だとしか思われていない。


これらの反応を見て思い出すのはもちろん3.11のときのツイッターでの【拡散希望】。情報飽和社会における要である電波が完全に死に、IHや交通などのエレクトリックに頼ったものは使い物にならず、安心を求めるがために人々は必要のないものを大量に買い込み、信憑性のない物を拡散していく。いつの時代も人間は根本的には進化していない。関東大震災の時の朝鮮人が井戸に毒がそれを物語る。もともと横のつながりが非常に強かった村社会日本だが、今ではそうでもないらしい。昔の日本といえば村の誰かが誰かの悪口を言えば次の日には村中に広がっていたものだ。拡散希望はしてないけど。しかし今では隣の人の顔すら知らないなんてのも常習化してきている。気を使うということの意味が根本から変わってきているのかもしれない。

 


命からがらに逃げた開かずの部屋の作りは非常によかった。セブンの犯人の部屋も頭逝っちゃってる感がガンガンに出てて最高だったが、こちらも不気味な研究や化学薬品が並ぶ部屋で、そこでは呪われた少女について研究されていたっていう設定も〇。ローマ法王から殺せと命令が下っていたり悪魔だとか意味不明な文書が山のようにあり、その中からテープレコーダを見つけ聞いてみると、伝染病の源である非人道的ウイルスをここで作っていたことがわかる。テープには懺悔する男の声が延々と続き、”彼女をこの部屋に閉じ込めた”なんていう今すぐ逃げ出したくなるコメント。そんなことはつゆも気づかず逃げ延びるために屋根裏部屋を空けてしまった報道陣はまさにパンドラの箱を空けるがごとく、悪魔の少女をこの世に舞いおろしたのだ。パンツ一丁の少女はもはや少女というよりヤマンバのような垂れた乳と白髪でビジュアルはキモさマックスである。そんな少女(ヤマンバ)から逃げようと息を凝らし、暗視モードでレンズ越しに探り探り逃げようとするが、例のごとくドンガラガっシャンして気付かれ貪り食われて終わる。つれー。



内容は結構ありがちだがやはりPOVの先駆けということでかなり質の高いゾンビ映画となっている。POVについてはどうやらジョージロメロのダイアリーオブザデッドのほうが先だったがこちらが先に公開となったためロメロがマネしたみたいになってるらしい。
POVといえばブレアウィッチプロジェクトがまず思い浮かび、そんでもってクローバーフィールドなんていうクソ映画があったなと思い返す。かつては手ぶれはノイズであって消すべきミスであった。定点カメラとスライドが常識であった映画界に手ぶれを大胆に使ったPOVが何をきっかけとして取り入れられたのかは謎だが、推測としてはスパイクジョーンズのようなスケート界からの監督であったりザックスナイダーのような今までの映画から大きく逸れた撮り方をする監督が多く台頭してきたことによる技法の発明だと考える。
今となっては手ブレ主観映像はメチエのひとつとして完全に定着し、その方法論は普通の俯瞰映像にも積極的に応用されている。しかし撮り方に工夫をこらさないとPOVはほんとに酔う。FPS酔いなんてもんじゃない。FPSならまだ自分で操作してるのだから辞めればいいが映画となるとそうもいかない。クローバーフィールドを俺はアメリカ行きの飛行機の中で見たのだが、夕飯を拒否したほどだ。大好きな豚肉だったにもかかわらずな。クローバーフィールドにはほんとにいい思い出はない。ラストのくそっぷりも救いようがないしあれを評価するメディアの臓器各位はどうかしてるとしか思えない。クローバーフィールドに死を!(*RECのレビューです)
 
そういえば続編があるらしいです

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