日本原作を映画化しその名を轟かせた韓国版オールドボーイ。あの傑作から10年ほど経ち、差別問題やアメリカのあらゆる社会問題を映画に取り込み世間に歯にもの着せぬ言いようで警笛を鳴らす巨匠スパイクリーがそのオールドボーイをリメイク。本人はリメイクではなく別のものと発言していたが内容の大筋としてはほとんど同じ。突然監禁されて、解放されて、答えを探して、復讐して、罪を知る。そして原点に帰す。
まず低俗な親父ジョシュブローリンが監禁室にいれられ浄化される。それは新約聖書に通じる。新約聖書ではイエスは40日間荒野での断食をしサタンに打ち勝つ。サタンから石をパンに変えればいいではないかという誘惑に、勝ち自殺を誘惑されるが勝つ。ジョーは監禁室でイエスキリスト化したのだ。アメリカ版はそのキリスト精神が存分に感じられた。浄化され洗練された復讐心だけが部屋に残る。
解放されたジョーは毎日出されていた中華料理の味を何十軒も店をまわり特定し、敵のアジトに餃子をエクストリーム配達する。
ちなみに私は餃子が一番好きなので他のどんな痛々しいシーンよりもこの餃子のシーンで悶え苦しんだ
餃子を食う!食う!食って食う!これはもはやオールドボーイならぬ餃子ボーイいいんじゃないか?
その後答えを探すべく手掛かりを洗い出す。それはジョーの過去に潜んでいた小さな事件がきっかけだった。
韓国版との違い
・スパイクリー的要素
監禁室のテレビでは案の定俗世の流れを映す。クリントン就任、ハリケーンカトリーナ災害、ブッシュのイラク進攻、そしてオバマ就任。
この二十年でアメリカは大きな変化を迎えた。固定概念からの脱却、WASPの崩壊、アメリカという国のもろさ。テレビで大統領だけを映すのではなく、カトリーナを入れるあたり、やはり未だにスパイクリーはあの時の黒人差別を許していないようだ。
・痛々しさ
グロさが増してる。韓国版での名シーン釘抜きで歯を抜くシーンは無く、代わりに首につけた点線をえぐるという聞いただけでも首筋が寒くなる尋問や、友人の舌が抜かれてジョーのもとに贈られたり、首切りはもはや当たり前で、すぐ流されるといった具合。グロシーンは見慣れていたと思ってたが結構な衝撃だった。
・演出
韓国版の良さとして若干フィクションじみていてアートっぽさがあった。嫁を殺した濡れ衣を着せられた時もグルングルン主人公の周りをカメラが回ったり、巨大なアリがいたり、咥えたタコがウネウネしたり(今回も一応タコの出番は5秒ほどあり韓国版を意識している)。スパイクリー版にはあまりそういったアート性は無く、至極シリアスに不安と緊張感を煽るカメラワークと雰囲気が最後の最後まで続く。だからはっきり言って見終わってからとても疲れる。
・アクション
戦闘シーンはやはり天下のハリウッドと言うこともあり、迫力とスリルがヤバイ。てかジョーが解放されてから強すぎる。フックを食らったアメフト選手が半回転して頭から着地する、ドスを背中に刺されながら15人くらいボコす等とても20年引きこもってたとは思えないスーパーマン具合。これはタイトルマンオブ餃子ボーイでいいのでは?日本の艦これヲタも実は鍛え抜かれててこんぐらい強ければWWEが日本人選手だけになるな。敵役のシャールトコプリーさんは第九地区で腕がエビになり、エリジウムで刀を振り回して桜とともに散ったあの人。今回もミステリアスなオーラで常道を逸した悪役を演じており、適役だったと言える。最後の潔いシーンも客を混乱させるいいエッセンスだった。しかし思うに、二つの質問に答えられた報酬として4つの報酬(強姦証拠動画、自白、2500万ドル相当のダイヤ、自殺)を挙げたが、自殺は最後まで言わないでおいた方がラストの衝撃増すと思うんだけどな。あと幼少期のシーンで父親に胸を散弾銃でぶち抜かれながらも生きてるってのがちょっと謎。
総合的な評価としてはやはり最初のインパクトが凄まじかった韓国版オールドボーイに軍杯が上がるが、アジアの閉鎖的な絵が嫌いな自分にとってアメリカの雰囲気は違ったエッセンスとして良かった。餃子食いたい
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