2012年12月6日木曜日

【映画】メタルヘッド





自動車事故で母という大きな存在を亡くした少年TJは無意味で灰色な毎日を送っていた。学校にいけばいじめられ、家に帰れば無精髭を伸ばした空気の抜けた風船のような父親が無言でソファに座る。二人を励まそうとするのは祖母だけだったが、祖母の語りかけは二人の耳を通過するだけ。まさに生きるしかばね。

そんな、死んだも同然な毎日にロン毛のメタル野郎が突如加わる。TJが憂さ晴らしに投げた石がメタル野郎の仮住居(人んちの空家)の窓を割ったためだ。
メタル野郎は家に居座りチャンネル権を奪い問題ばかり引き起こす。しかし彼の登場から生活は徐々に変わってゆく。父と子は久しぶりに本気になって喧嘩をし、TJは汚い言葉を使うようになる。二人は事態はますます悪くなっていると思っていたが、事態は良くなっていた。

メタル野郎は二人に希望を持てと言ったわけでもない。励まそうとしたわけでもない。ただそんな糞みたいな人生楽しいか?と罵倒しただけだ。それが彼なりのやり方であり結果としてそれは成功だった。

ある時祖母が死ぬ。あれだけ毎日語りかけていたのに、あれだけ時間と余裕があったのに無視していた父と子。死とはもう戻らない事を再び思い知らされる。
またしても何も出来ずニヒリスティックになる二人。なにも成長してねぇじゃねえか。そんな面持ちで家を飛び出すメタル野郎。
葬式でメタル野郎はスピーチをする。それは万人が涙する心揺さぶる話ではなく下品な物だった。しかし最後まで彼なりのやり方を通した結果父と子はついに気がつく。いつまでジメジメしてんだと。祖母の散歩の約束を果たせなかった二人はメタル野郎と共に棺桶を運び散歩する。これぞメタル。
ここでいうメタル野郎はイエスキリストの現代版である。現代版といってもR指定の一番ダメなイエスキリスト。ロン毛でヒゲで上半身裸の姿はすごいイエス。笑

欲を言えばもっとメタル色を出して欲しかったが、コメディになりかねないのでこれくらいが正解か。

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