2013年9月1日日曜日

【映画】マンオブスティール

 




ザックスナイダー監督クリストファーノーラン製作デヴィッドゴイヤー脚本ときたら観ないわけにはいかない。同時に期待しすぎる部分もあったので結果的に満足度は50/50。

ザックスナイダーといえば300、ウォッチメンなど、斬新な映像革命とやり過ぎなくらいド派手な映像効果で子供心を捨てきれない我々の欲求を満たしてくれるが、同時にセーラー服の金髪美女が暴れるだけのくそつまんねー映画にもなりかねない危険があったが、そこは天下のノーランがカヴァーしてくれたようだ。ダークナイトシリーズの脚本を担当したゴイヤーがついた割にはストーリーは割とシンプルかつ王道で、ダークナイトシリーズのようなヒーローの苦悩や善悪の概念みたいな深いアメコミ道徳教室は一切開かれなかった。希望!愛!善!みたいな単細胞感であったが、バカっぽさはない。軸として善は善でもそこに導く手段としてどんなチョイスをするか、がテーマになっていると考える。おそらく苦悩に満ち溢れるヒーローを再びやるのはDCコミックスのイメージが陰湿になってしまうことを考え避けたのだろう。


まず良かった点。とにかくスピード感と爽快感がいまだかつてない。戦闘シーンなんかは瞬きをする頃には地面にたたきつけられていたり、一瞬にして100メートルくらい吹っ飛ばされていたり、気を抜けない。空を飛ぶ描写なんかは誰しもが夢見た、自分の身体で空を飛んでみたいという欲求を満たしてくれる。おそらくこれ以上のスピード感が感じ取れる映画は前にも後にもないだろう。なぜならこれ以上早くすると肉眼で観れない。
またファイトシーンの激しさはザックスナイダーの得意分野である派手な見せ方で非常に興奮する。ビルに叩きつけてビルごと倒したり、地面が盛り上がるほどに叩きつけたり、超人×超人らしい戦いっぷりかつCGらしさがあまりなく違和感なく楽しめた。めずらしくハンスジマーの戦闘シーンでの曲の盛り上がらせようも〇。
それと無駄に建物を崩壊させるシーンの多さ。マイケルベイが無駄に建物を破壊することで有名なことからメイヘムをもじってベイヘムというが、アルティメット・ベイヘムと称していいほどビルが壊れ街が崩壊する。アメリカは自分の国が破壊される描写がお好き。カンザスシティで戦うシーンで、これでもかっていうほどセブンイレブンがぐっちゃぐちゃにされるのだが、おそらくあれはザックスナイダーがセブンイレブンに個人的な恨みがあるのだろう
最後に名優たちの演技。個人的にケビンコスナーの演技に感動した。得体のしれない息子を自分の息子として清く正しく育てる父なのだが、一番かっこいい父親像かもしれない。また本当の父であるラッセルクロウも感情のこもった演技をしており親の愛を感じ取れる名演であった。


逆に悪かった点。早い&CG&激しいで眼がむちゃくちゃ疲れる。気を抜けなさすぎで終わってから放心状態に。3Dなんかはおそらく知恵熱が出るだろう(いそがしすぎて)。またちょいちょいズームするカットがあり、多用しすぎじゃないかと感じ興ざめ。リアリティを出そうとしたのだろうが、クローバーフィールドを思わせるためマイナス。
あとはストーリーがもうひとひねりあってほしかった点。現状では敵はチョイ強いけど頑張れば勝てるスーパーマンでしかなかったのでずっと俺のターン感が少しあり。すんなり事が進むのではなくターニングポイントのようなものが必要だと感じた。人類を救う明確な理由がいまいちない。
あとはもう声高らかに言いたいのがゼッド将軍の髪型。なんだあのワックス覚えたての中学生みたいな束感。ローマ人か。それが気になって仕方がなかった。正直横にいた軍曹みたいな女性が将軍で良かった気もする。





アメコミ作家のほとんどはユダヤ系である。『いかにしてユダヤの歴史と文化がコミックブックを作ったか』という著作が出るほど圧倒的多数がユダヤ系であり、今作のベースであるスーパーマンの作者ジェリーシーゲルおよびジョエルシャスターも東欧出身のユダヤ系だ。そのためストーリーをひも解くと、そこにはただのアメリカ愛国者がお国の為に戦うだけの話じゃないということが分かる。
スーパーマンの本名はカルエル。父の名はジョーエル。ちなみにカルエルとはヘブライ語で"力"、"神"を表す。故郷は銀河の果てにある惑星クリプトン。そこは資源の採掘をしまくりもはや惑星が保っていられる状況ではなくなっていた。そのためカルエルの父は生まれた子供を遠く離れた地球に送る。その際にクリプトンの10万人のデータや記録であるコーデックスをカルエルの遺伝子に溶け込ませる。このコーデックスが後に重要なものとなる。惑星クリプトンは爆発して消滅しカルエルは宇宙の孤児となる。これはユダヤ人が戦争で祖国を失い世界に離散した事実を反映している。カルエルはアメリカの田舎町カンザスで拾われクラークケントという名前で地球人として生きる。旧約聖書に出てくるモーゼも同じように籠に乗せられナイル川を下りエジプトの王女に拾われ後にモーゼの十戒として知られる。またクラークケントという白人的な名前を名乗るのも、ユダヤ系は差別を避けるために偽名を使っていた事実を反映している。ではなぜユダヤ系なのに星条旗を背負って戦うのか?それは遠く離れた星から来た自分をかくまい、チャンスをくれた自由の国アメリカを守るため。いわゆるユダヤ系が60年代移民としてカリフォルニアに移り住み成功を収めてきたように時に右翼的なほどに愛国的な部分を象徴している。
 
 

クリストファーノーランてことで笑える要素は皆無といってもいいのだが唯一笑えたのがカルエルを少年時代いじめてた太っちょが後にIHOPで働いているところ。IHOPとはアメリカの内部(田舎)に多くある簡単なレストランで日本でいうすき屋的なポジションか。所謂田舎の仕事の末路みたいなのを風刺している。WALMARTだと直接的すぎるし訴えられるから避けたんだろうがWALMARTに宇宙船ごと突っ込んでほしかった。
 
マンオブスティール、和訳すると鉄の男。あれ、マーベルがこないだやった映画とキャラかぶってね?そういえばバットマンVSスーパーマンの製作が決まったが。宇宙船を拳で破壊するスーパーマンと脊中にひざ蹴り食らって半年くらい動けない状態だったバットマン、どちらが勝つのか!勝敗はいかに!

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