監督の二ールブロムカンプは第九地区を撮った時まだ30代で、その若さでアカデミー賞候補になるのはスピルバーグの再来とも言われている。その監督のSF超大作ということで期待大で見に行ったのだが全然面白くない。細かく分解していけば面白いシーンもあるし内容も現代を痛切に皮肉ったプロパガンダ的なポリティカルメッセージ満載なのだが、本筋がしっかりしていないためにで、結局この人は何がしたかったわけ?と疑問に思った。
おそらく監督が言いたかったのは、医療がどんどん発達しもはや直せない病気はガンと馬鹿と風邪くらいで、不老不死の未来はそう遠くないと言えるほどに医療は行くとこまで行ったが、その恩恵を受けられるのは上層部の一握りだけであり、上層部の下には巨大なヒエラルキーのピラミッドが礎として存在する。資本主義でありながら我々は競争することができず、上に行くことは不可能と言える。それは人種であったり職種や運が大きな壁として存在するためであり、世界は進歩しようとも世界の99パーセントの人間は死滅し続けると言った内容であると感じた。事実、アメリカの富の50パーセントはアメリカの人口の1パーセントが保有し、1パーセントの彼らはアフリカで資源を得て莫大な資産を築き上げたり、投資による課税率の低い儲け方で金を増やすというようなケタの違う生き方をしている。先に起きたウォール街を占拠せよ運動がいい例だが上がのさばる限り下は苦汁をすすり続けなければならない。それゆえに人々は家を買って安定した資産を得(事実それは安定していなかったのだが)、医療保険に入れず病気にかかれば莫大な金をかけて病気を治すか死ぬかの究極的なオルタナティブを強いられる。それこそが2013年であり、過去に生きてきた先人達が想像する2013年とは医療や技術の進歩の形式的な面では正しく、内在的な意味では大きく違っていたのだ。
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※ただし金持ちに限る
じゃあなぜこんだけ社会に対する痛切なメッセージがたくさん含まれているのにあんまりおもしろくないのか?おそらく全体的にふわっとしすぎてるからだろう。コロニーでの生活をもっとクローズアップしたり、マットデイモンが戦う理由がしっかりあればこの映画はもっとヒットすることができたはず。コロニーのデザインは2001年宇宙の旅的で素晴らしいし、相変わらずスラムの汚く低俗で必死に生きてる感を出す描写はうまい。だからこそ惜しいと言える。パワードスーツの残念感は何とも言えないが。(なんかに似てると思ったらこれだ...)
あとはジョディフォスターの使い方をもうちょっとちゃんとしてほしいところ。。。
カメラワークもいいしCGも違和感がないので第九地区というハードルを取っ払って観ればなかなか楽しめるはず。
PS
途中から敵がデヴィッドゲッタにしか見えなかったのは私だけでしょうか
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