2014年2月11日火曜日

【映画】ROOM237



IQ200の男の考える事は我々凡人には到底理解できない。ただ、逆にIQ200の作る作品の細かい部分は全て何かの意味があり事象に繋がるのでは?という解釈ができる。例えばそこらの凡人が家の絵を描いたとしてもそれは家でしかないが、IQ200となればその家のバックグラウンド、向き、色、配置などすべてに意味がある、と我々は考えたくなる。キューブリック自身があまり多くを語らない事もあってキューブリック作品は今なお語り継がれ、名作としてあり続ける。

私がシャイニングを見たのは高校生の頃だった。その頃はとにかく多くの映画をと、家にある映画を片っ端から見ていた。パリテキサス、波止場、ジーザスクライストスーパースター、アパッチ砦。どれも名作だが、その頃の私には全くと言っていいほど興味を惹かなかったのだが、次に手にしたシャイニングが私の全神経を揺さぶった。
まずオープニングの空撮。未だかつてこんな手法の映画を見たことがなかったので全神経が興奮した。と同時に甲高い女の声のような不協和音とテロップで流れるシャイニングの文字が強烈なインパクトを焼き付ける。その後もエレベーターから流れる血、腐った女、タイプライター、双子の死体、REDRUM、斧と、一瞬たりとも手を抜いたシーンはなく、完璧で何度も観たのを覚えている。

本作ROOM237はそういったシャイニングに心揺さぶられた人々が、自身の誇大解釈を声高らかに自慢げに語るドキュメンタリーだ。どんだけ深読みなんだよってものから、あーたしかにそれはあるかもしれん…てものまで。途中から深夜のファミレスで座談会が如くうらうらと自身の解釈を語り合う大学生を思い浮かべるのは言うまでもない。

全体を通して繰り広げられる深夜ファミレス持論争は大きく分けて三つある。
まず一つがネイティブアメリカン侵略説。作中でも語られるように、あのホテルはインディアンの墓場の上に立てられた。だからか館内にはネイティブアメリカンを思わせる内装や写真が多く飾られている。またふくらし粉の柄がインディアンで、当初は規則正しく並んでいたのに、気が狂ってからはごちゃごちゃと並べられていることからインディアンの呪いによってジャックは気が狂ったのだと。それゆえにあのエレベーターから流れ出る血はネイティブのものだというのだ。
二つ目はユダヤホロコースト説。序盤に積まれたスーツケースの山やタイプライターが、ドイツナチスによるユダヤ人迫害を連想させるという。タイプライターのブランドがドイツ製な上にワシを意味するドイツ語が書かれた物を使っており、ホロコーストを連想させると。キューブリックが生きた1930年以降は戦争の時代で数多くの戦争に関する著書を読んだと本人も語っている。そのため根強くホロコーストに対する意識があり、フルメタルジャケットでは戦争の非日常的残虐性を描き、シャイニングで暗喩としてホロコースト批判をしたというのだ。
三つ目は月面着陸捏造説。これはキューブリックが月面着陸の映像に加担したということを匂わせるというもので、237という部屋番号が月までの距離と同じ、また息子のセーターがアポロ柄なので、237号室に向かうことは月に行くという暗喩、そしてそこにあったのは裸の女=現実ではないということから、捏造説を口止めをされていたものの映画に含んだのではという解釈である。

どの説も考えすぎだろと思うが、アンビリーバボーを見てる時のようなワクワクは確かにある。所謂信じるか信じないかはあなた次第ってやつだ。
シャイニングマニアの極みが集って出来たのがこの映画なわけだが、凄まじいのが、映画を逆再生して同時に見てみるというもの。普通そこまでするかと思うが、見てみるとびっくり、見事にどのシーンもうまい具合に重なるのだ。キューブリックは一点透視図法を常に用いてる為に重なるのは必然といえば必然なのだが、息子の不安げな顔とジャックのキチガイ顔(序盤からキチガイだが)が重なったり、オープニングの景色とエンディングの文字が招待状のように綺麗に収まったりと、キューブリックの事だからそれも踏まえてるのかもしれないと思える。
だがあくまでこの映画はキューブリックの映画が好きで、それも持論をベラベラ喋りたがるような頭でっかちにしか楽しめない。それに、キューブリックはおろか作品スタッフにすら了承を得ず勝手にやってるわけだがら本当かどうかも分からない。それゆえつまらない人間にはおそらく五分ともたないだろう。
キューブリックも棺桶の中でこう言ってるはずだ。
オコンニチハ!!!!

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