2012年11月5日月曜日

【映画】最強のふたり

もともとミニシネマであったものの好評により全国的に公開されたフランス産の最強のふたりを鑑賞。
遺産は大量にあるもののパラグライダーの事故により首から下が半身不随となってしまった資産家がスラムの青年を介護に雇い第二の人生を歩む話。
映画は全体的に焦る様子もなく穏やかでスムースに回想や幻想もなく話が進む。それはとても心地よく観ていて楽だ。
話は一貫してシニカルな相対主義をとっている。若く自由の身ではあるが金はなく家族は貧しく深夜にたむろするくらいしかやることがないドリス。一方で金も住処も保障されているが首から上の娯楽だけのフィリップ
お互いの共通点といえばこのくそみたいな人生と社会からの離脱だ。人間は弱い。コーヒーが飲みたいと思えばコーヒーを飲み飲み終われば今度はマフィンが食べたくなる。そして眠くなり....zzz
体があればどこかに行こうという欲が湧き、金があれば何かを買おうとリンクする。この映画の魂胆にはあるべきものに感謝せよということなのだろうか。

しかし劇中でドリスとフィリップはとても満たされている。お互いの足りない部分をカバーし、お互いの知らなかったことを経験する。そしてあんな不良をなぜ雇ったという知人の問いかけに対し、彼だけが私を対等に扱うと。
介護のあるべき姿とはこういうことなんだと思う。現状としては自分より劣った人間が不平不満を言えば当然腹が立つ。結果介護者によるいじめが蔓延している。ドリスはフィリップを障害者だと思っていない。投げ返してこいと雪の球を投げつけたり新しい友達くらいにしか思ってない。これが介護のあるべき姿である。

心から笑える箇所がたくさんあり、初めて劇場で声を出して笑ってしまった。感覚のない足にお湯をかけてみたりフィリップのひげで遊んでみたり。まるでその場に一緒にいて笑っているかのように錯覚させる撮り方も素晴らしい。


この映画を見てゾンビ映画ばかりとりこんでいたカビだらけの脳がすっかり浄化された。死ぬことを恐れて生きるのではなく目先のことを楽しもう。生きる活力となるそんな映画。

9/10点中
 

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