2013年2月21日木曜日

【映画】ボラット

 

 
アメリカ合衆国に関して何も知識がない人間であれば、ただの下劣でわけがわからないパキスタン人がバカやってる映画で終わるだろう。しかしこの映画でもっともバカでキチガイじみているのは対象であるアメリカ人なのだ。
人間は客観的に物を見れない。見れていれば今頃戦争だってとっくに終わってるし雇用もとっくに解決してる。国という殻にこもると、その中にいることが正義だと勘違いするようになる。その一例として大国アメリカが選ばれた。極度の保守的脳で筋肉質、ステロイドを打っておきながらホモは地獄の炎で燃やしたい。キリストこそがすべてで、それでいて中東の血を欲している。このパラドックスで満ちた偽りと主張大好きなヒーロー大国は、こんなアホなカタチ(ボラットしかりマイケルムーアしかり)でないと自分たちの愚行に気づかないようだ。

ボラットはカザフスタンの田舎から出てきた青年が、アメリカの文化を学ぶという流れに沿って進む。実際はイギリス生まれのコメディアン、サシャ・バロン・コーエンという俳優が髪をチリ毛にして中東訛りの英語で人々を騙しているのだが。ちなみに彼は昨年公開以来メガヒットを記録しているレ・ミゼラブルにも宿屋の主人として出演している。大快挙。ボラットではレミゼラブルに出られるようなツラは一切見せてない。謎。
 
内容は正直誰向けでもない。アメリカンジョークかといえばそうでもないし、頭の固い人が見ても多分ブチギレるし、頭の弱い人が観ても政治的背景とかわかんないしつまらないだろう。
じゃあなんであそこまで話題になったかといえば、多少なりともどの層にも面白い点と不快な点がバランスよくあるのだろう。
例えばボラットがよく口にする「アメリカと合衆国(united states and america)」は、元アラスカ州知事サラペイリンのツイッターでの失言を引用してる。映画ブルーノでも「アフリカという国」という言い回しが出てくるが、これもサラペイリン。ここで分かって笑うのが頭固い人。でもここで笑う人は多分、便所の水で顔洗うとこでは笑わないだろう。え、どっちも笑ったんだけど!って言う人は多分B型だな。一方で頭軟い人はこの逆なわけだ。
 
ボラットが暴れるたびに本当のアメリカが見えてくる
 
これはCMの言い回しだが的を射ている。我々が普段ドラマやテレビ、映画で目にする煌びやかでエレガントなアメリカとは表面上なものであり、広大なアメリカのはじっこ(東海岸と西海岸)だけだ。それ以外の真実はここにある。何かに取りつかれたように保守的で、多分それはキリストで、勝手にお告げだとか言って銃を持ち、自分らと違うものは徹底的にたたきつぶす。それでいて自分はヒーローだ。どうかしてる。もちろん全員が全員ではない。それは昨今話題になっている中国人の暴徒化が一部であったり、韓国人のパクリ文化といわれるものも一部の人間がやっているということと同じであって、全体を否定はできない。しかし集団アイデンティティーというものは悪い部分が浮き彫りにされやすい。
 
中学の頃旅したアメリカのオハイオ州はすべてがビックですべてがきらびやかだった。しかしひとたび田舎にいくとほとんどが太っていて狂信的なクリスチャンですぐパーティを開いては議論を交わしあうリアルアメリカンだったのを今でも覚えている。しかし選挙で最終的に結果を左右するのはここオハイオであるし、目の前の人々なのだと感じた。ダイヤと金のアクセサリーをぶら下げ、毛皮のコートを着てランボルギーニに乗るのは一部だ。ほとんどはこの映画が語るところにある。
 
いちおうストーリーとか展開があるしことがうまく進みすぎてるからやらせだろう。カメラアングルとかもしっかりしてるし。さあこのタイミングで怒って!なんて具合にはいかないでしょ。つうか気付くよねカザフスタンの人じゃないって。だから訴訟問題になってるみたいなのも多分やらせかな?
 
観るべきかと言われたら別に見なくていいんじゃないって感じだけど観てる人がいたら異様に話が盛り上がるであろうそんな映画。少なくとも2001年宇宙の旅よりはおもしろい。
 
あろうことか食事中に観てしまい完全に食欲が失せたよね。
 

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