2013年12月16日月曜日

【映画】ドライヴ

 



宗教画のような優しい光と物騒なまでに静かな流れがおぞましい決断を今か今かと急かす。
フレームとしての美学で映画を楽しむ私にとってこの映画はかなり高評価。どのシーンをとっても絵になり構図、光、表情やバランスが計算し尽くされており、見応えとしてはかなりある。ストーリーはありがちな復讐劇であるが、それをも忘れさせるようなフレームと、ラテックス素材のグロ描写がこの映画の評価を高めている。
車内から撮った街を流すシーン、一昔前に流行った空撮、カメラワークが秀逸で、どのシーンも切り取って絵になるフレーム。
バイスシティーにそっくりなピンクの筆記体タイトルでオープニングはまるでグラセフ。
選曲もどこか80'sを思わせるポップチューン。寂しくも切ない恋心を歌うような曲がストーリーのやるせなさを物語る。
説明や無駄なシーンを一切省いてるのがスムーズでとてもいい。
またライアンゴズリングが全然喋らず表情で演技するのも高評価。まるで冷たい石のように表情はなく、睨みつけるその目は温度はない。スタントマンと裏の顔を使い分ける演技に脱帽。
なにも言わない静かなシーンが多く、心の奥底にある感情を楽しめる。
また質屋強盗を男だらけではなく女が一人いるってのも斬新でいい。(ハメられるけど)(そっちのハメるじゃない)
モーテルでマフィアに襲われるシーン。脳みそが豪快にぺろりんちょしたり、スカーフェイスばりにバスルームでの流血ファイトするあたり惜しみなく映してくれて評価大。
眉間に弾丸当ててハンマー振りかざすシーン なんかはかなり記憶に残るしドライブと聞いたらあのシーンを連想する人が多いと思う。
またエレベーターで追っ手をストンプしまくって顔面を粉砕するシーン。それを見ていたマニガンがドン引きしてドアが閉まる、二人に壁が出来る、みたいなのもわかりやすくていい。おそらく付き合ってみたら思ってた人と違うパターンの最上級。
リズオートラニのオーマイラブと共に八ッ墓村のごとく不気味なフェイスマスクをして殺すのもかなりそそる。
上記にあげたように印象に残るシーンが沢山あるため、ストーリーは単調でも、何度でも繰り返し見たくなるような作品。絵画もいいものは繰り返し見たいから壁に掛ける。それと同じ事だ。
あとは光の使い方。
顔に反射する赤い光、エレベーターで一度消えてまた光るライト、カラヴァッジョの宗教画のような救済を表すがごとく差し日を浴びる少年など、光が各々の感情、情景、ポジションを表している。結果的に光が効果的にシーンを盛り上げてるおかげでフレームが絵画のような美しさを解き放つ。
ダメな点としては全体を通して静かすぎる。ゴズリングの静かな煮え滾った怒りを表しているのかもしれないが、静かすぎて見てて息苦しい。静寂は耳にうるさいとは言うが少しの環境音だったり、細かいノイズ(例えば悪の法則の不快な低音やハンスジマーがよくやるバイオリンの細かい音など)があった方がもう少し違和感なく見れたかもしれない
 

 


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