2013年3月2日土曜日

【映画】ジャンゴ 繋がれざる者




公開初日に見ました我らがタランティーノ監督の復讐劇第二篇。イングロリアスバスターズではナチスの冷酷な将校を演じ、アカデミー賞をかっさらったオーストリアの俳優クリストフヴァルツさん。三銃士では普通のおじさんだったのにむちゃくちゃ個性的な役を見事に演じていた。ジャンゴでは元歯科医の賞金稼ぎとしてジャンゴに銃を教えるシュルツを演じたが、その個性的な表情と存在感が評価され再びアカデミー賞を取った。劇中の演技はまさにアカデミー賞もので、嫌味もなくインテリジェンスなバウンティハンターをスマートに演じていた。


南北戦争の二年前、南部では奴隷が売り買いされ、当たり前のように馬以下の扱いを受けていた。ジャンゴもまたその一人であり、素足にぼろぼろの麻をまとい、鎖につながれ商品として運ばれている最中だった。道中歯医者の馬車が前からやってくる(この馬車がまたハイセンス)。歯医者は面々に対し三兄弟の顔を見た者はいるか?と問いかける。それに対し見たと答えたものがあった。彼こそジャンゴであり、三兄弟にひどい仕打ちを受けた一人だった。元歯医者のシュルツとつながれざる者ジャンゴは手を組み賞金稼ぎをする。旅を重ねていくうちジャンゴには妻がいることを聞かされ、その妻は奴隷農場を保有する商人の中でも極悪なカルヴィンキャンディだということを知る。ジャンゴは妻を救うべくキャンディのもとへ向かう。


まずいうなれば超面白い。正しくはWhat the fuckin cool niga!かな
脳筋映画というような感じではないが、頭をすっからかんにして口半開きでノイローゼみたいな顔してみると最高に面白い。ミスティックリバーなんかは眉間にしわ寄せて正座して燕尾服で見ないとだめだよ。カルチャーなんかも理解する必要なし、バックグラウンドも黒人奴隷制は負の歴史~くらいわかってればよし、あとはジェイミーフォックスの素っ裸だけでも一部の人には楽しめるんじゃないか?
ただ過去のマカロニウェスタンとか俳優を知っているとより一層楽しめる。事実、フランコネロが出てきてジャンゴとジャンゴの話をするからだ。さらには冒頭の夕日のガンマンの曲、途中MISSISSIPPIのドでかい文字のスクロールなんかもタランティーノのマカロニ好きをうかがわせる。ラストのあの感じは多分風と共に去りぬだよね?
大ざっぱにいえば全体を通してまず血糊、ニガー、そんで火薬、批判。これが根幹となる。今回はタランティーノ特有の"意味ありげに話す無駄な会話"はあまりなかったので、こちとら非常にありがたい。KKKの頭巾の穴のくだりはまあ無駄ではあったけどすげえ笑えた。映画に出てくるKKKっておーブラザーもそうだけど間抜けにしか描かれないよね。コントの大阪のやくざみたいなポジションか。

評価すべきはとにかく残酷にかつリアルにしたこと。CGを一切使わずアナログに爆薬で血糊をリッターで吹き出し、人間は撃てば血が出るんだよってのをクリストファーノーラン監督に示したような作りで感動(ノーランはいくら殴っても撃ち殺しても鼻血すら出さない)。残虐にすれば残虐にするほどアメリカ人はこの問題を親身に受け取り頭を抱えるからだ。アメリカが生んだ黒歴史=黒人奴隷制はここまでブルータルでクルーエルなものだったのだ。だからこそ評価すべきであり、最高に胸がスカッとする復讐劇として出来上がった。タランティーノ自身も罪の意味があるのかまたはおふざけなのか知らないがジャンゴに撃たれてダイナマイトで粉々に吹き飛ぶという。


今回の不満といえば、脇役を例のごとく豪華にしすぎて主役のジェイミーフォックスが影薄くなってたことか。サミュエルLジャクソンの厭味ったらしい黒人嫌いの黒人は最高にコミカルだったし、ディカプリオ初の悪役はくせがあってしかもよくこんな批判を受けそうな役を演じたなあと感心した。おまけにクリストフヴァルツとしまいにはフランコネロでてきちゃったら、もうジェイミーフォックスの出番なし。でもあの役はジェイミーフォックスじゃないと務まらなかっただろうからこれらは必然か。個人的にブラッドダイアモンドの彼でもいいかなとちょっと思った。

あとはいうならば音の誇張がすさまじかったかな。あれはB級感を出そうとして意図的にやったのかわからないがクローズゼロ並みの誇張で笑った。銃を撃てば大砲みたいな音出るし、歩けば巨人みたいなおとするから落ち着きがない。カメラワークの手動ズームは相変わらずB級感出ててよかったけどな。

音楽のチョイスもまんべんなくクラシックからブルース、ヒップホップまで出てきたし、ファッションも青のスーツとか緑のアウターとか最高にクールな仕上がりでオプショナルな面でも素晴らしい。
言わずもがな脚本も王道でありながら展開を楽しませ、なおかつ約三時間の長丁場を長いと感じさせないバランスのとれた無駄のないストーリー、計200回ほどのニガーというスラング(パルプフィクションではファックが200ほど)、何千リッターという血糊と何トンもの火薬、ロケーション、俳優、すべてにおいてタラちゃん最高!たまには頭を休めてジャンゴしたほうがいいぜ。

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