2013年6月8日土曜日

本当のアメリカ


アメリカに留学にいく大学生が近年増えている。彼らにどうだったと聞くと決まって返ってくる答えは太ったか楽しかっただ。もちろん俺も5キロ太ったし楽しかった。しかしアメリカは恐ろしい国だと同時に感じた。ただ太りたくて楽しみたいだけにアメリカにいきたいのであればこれを読んで何らかの考えることがあればと願う。
ニクソンやJFKなど大統領モノやプラトーンなどを手掛けたオリバーストーン監督による映画『W』を見た。Wとはジョージ・W・ブッシュのミドルネームを取ったもの。伝記作品ではあるがその内容は究極的に中立的で、批判を感じさせず、また冷酷なまでに客観的だ。同情さえも寄せさせる。
ブッシュが何をしたかは政治が好きな人もそうじゃない人も大抵知っているだろうが、一番に挙げられるのはやはりイラク侵攻であり、今では政治が好きな人もそうでない人もブッシュを選んだことは間違いだったと感じていることだろう。しかし選ばれた当初はアルゴアと接戦で選挙人によって勝利するというちゃんとした(裁判沙汰にはなったが)選別方式で大統領になっている。どこで歯車がずれた??
ブッシュの経緯をみてみよう。ジョージブッシュはご存知41代大統領ジョージ・H・W・ブッシュ(以降パパブッシュ)の息子でテキサスで裕福に育つ。学生時代は遊び呆け大学もコネでイェーガーに入り、警察にお世話になったこともあった。ブッシュ家は代々高貴な家系で、女系はイギリス王室に連なる。そんなブッシュ家に傷がつくとしてブッシュはパパブッシュにより様々な職業体験をさせられるがどれもダメ、おまけにベトナム戦争が始まるとベトナムに派遣させられることを恐れまたまたコネで州兵に入る。しかし州兵でもサボってばかりだったようだ。酒に一時は溺れパパブッシュと喧嘩になることもあった。このような行為や怠惰はすべて家系が良すぎるからだと劇中でブッシュは語る。お前はできそこないだと言われ続ける苦悩の末なのだ。ブッシュという名のプレッシャーが重すぎて素直になれない。しかしある時ブッシュは米国聖公会を辞め米国メソジスト派へと変える。それはいわば父に認められなさ過ぎて父(神)を変えるという逃げ。そして神の御声により大統領になれと言われたらしく大統領を目指す。またこのことからブッシュが共和党でキリスト教右派や福音派の票を集めるきっかけとなる。
そして大統領にまで上り詰めイラクに攻め込む。父を見返すために。パパブッシュは湾岸戦争で詰めが甘かったためにフセインを逃し完敗させることができなかった。ブッシュはその敵を討つため、そして周りにいるチェイニー副大統領の石油欲しさが組み合わさって、何万もの死者と、国内の格差拡大と大赤字という負の遺産を残したのがイラク戦争だ。ここまで繋がって初めてイラク戦争を語ることができる。

旧約聖書にカインとアベルという話がある。この兄弟は神に貢物をしたが神は弟アベルの貢物だけを喜んだ。兄カインは激しく嫉妬し弟を殺す。結果兄カインはエデンの東へと追放される。映画エデンの東もそんな内容だ。ブッシュはこれを体現したと言っていい。それも弟一人ならまだしも、4000人以上の米兵と、10万以上のイラク人の命を犠牲にして。
ブッシュは正直私は嫌いじゃない。もちろん好きではないが、あらゆる政策は彼自身が考えてやったことではないからだ。いわば馬鹿すぎて周りの人間に騙され利用され使い古された。



では何がここまで血なまぐさい結果を生んだのか。
イラクに侵攻しなければならなかったのだろうか?
平和的な解決方法は?
アメリカ人の潜在意識にある恐怖がこれを物語る。




イラク戦争、いや911をはじめ2000年以降のテロや、コロンバインでの銃撃事件以降アメリカ人の「自衛」に対する思いは一層強くなったと思われる。自衛として使うのはもちろんだ。
アメリカ人は歴史を見ればわかるが、銃で始まり銃で終わる国だ。平和にボケ尽くした我々にとってそれは考えられないことだがアメリカでは自分の身は自分で守らなければならない。アメリカの治安の悪さはトップクラス。無理もない。なぜならWALLMART(日本でいうSEIYU的なスーパーマーケット)で誰でもそこまで高くない銃をいつでも簡単に買えてしまうからだ。旅行者でも簡単にコルトからSVDクラスのライフルを買うことができる。カナダでも同じように簡単に買うことができるがトロントでの犯罪は非常に低く、起きる犯罪もアメリカ人であることが多いようだ。ではアメリカ人とカナダ人にいったいどんな差が?ファーストフードを食ってるから?いやベジタリアンも多い。移民が多いから?カナダも移民は多い。バンクーバーは中国人が多すぎてホンクーバーと言われるほどだ。答えは歴史にある。


ここでアメリカ史の話を。(参考Brief history of the united state)
イギリスから清教徒たちが英国政府の弾圧を逃れ新天地を目指し航海し、アメリカに旅する。もともと住んでいたインディアン達は何もしてこなかったのにビビって皆殺しにし、どんどん開拓していき、今度はお互いをビビって疑い魔女狩りをする(魔女狩りによりネズミが増えペストの大流行で人口が減少した)。そして今度は13植民地とイギリスがいわゆる独立戦争をして植民地が勝ち、アメリカ合衆国が成立。合衆国憲法が成立され2条で銃を保持することが認められる。これによりアメリカは銃を唸らせアフリカに赴き黒人を連れ帰って奴隷としてタダで働かせる(綿産業など)。結果としてアメリカは歴史が浅いにもかかわらず産業大国となる。しかし黒人が爆発的に増え、アブラハムリンカーン率いる北部と奴隷制賛成の南部で南北戦争が起き、北が勝つ。白人は奴隷時代の復讐を恐れたが黒人は平和を好む人々だったため惨殺などは一切なかった。しかし恐れてやまない白人たちは黒人を狩る闇の集団KKK(クークラックスクラン)を組織する。そしてそれは結果としてNRA(ナショナルライフルアソシエイション)になり黒人の銃保持を禁ずる。また黒人差別や人種隔離政策に怒りを示した黒人は南部を中心にデモを繰り広げる(キング牧師など)。これを恐れた白人は北部へ逃げ、ドアに鍵をかけ、銃で武装し、神だけを信じ、お互いを疑う生活を始める。これが今のアメリカだ。だからこそジャズで有名なニューオーリンズやテキサスなど南部では黒人が多く、ワシントンやオハイオなど北部は白人が多い。


歴史で見て分かるようにアメリカ人に混在するのは恐怖であり、政府はその恐怖を利用してイラク戦争へと踏み出した。「今イラクやアフガンへ攻め込まなければ大量破壊兵器や炭素菌はあなたの生活を脅かします」と。それも恐怖を利用するのは政府だけじゃない。企業もそうだ。銃がないと自分の身は守れませんと脅し銃は飛ぶように売れ、ニキビがあっては好きな子は逃げてくと脅し製薬会社は儲ける。どうだろう例えば日本で就職しないとお先真っ暗ですなんてCMをやって就職率を上げてみるというのは。おそらく自殺者が前年比の2倍越えになるだろう。一見我々の視点からすると、アメリカ人ってタフでまっちょで自信にみなぎってて心が広そうなんてイメージだが合ってるのはタフでまっちょくらい。本当は自信はあってもいつもおびえていて、キリスト教原理主義のような心の狭い人が多い。

視点を変えてイラク戦争の何がいけなかったかを。
もちろんイラク戦争自体は非常にむごい泥沼戦だった。上記に挙げたように官僚の独断と私利私欲により若い兵士だけでなくイラクの人々は沢山犠牲になった。イラク戦争の恐ろしさを伝える映画といえばハートロッカーだったりジャーヘッドがある。大量破壊兵器は見つからなかったことはおろか、国民の信頼は地に落ち大統領史上もっとも支持率の低い大統領となった。
だが問題はそこだけではない。軍事費に莫大な金をかけたことにより雇用対策を野放しにし、結果として貧富の格差は大きく開き中級階層の人間が極端に少なくなった。しかも政府は富裕層や大企業に対して税制を緩和したのだ。第二次世界大戦時は貧富の差は開けなかった。富裕層に徴税したからだ。
これにより政府が規定した平均年収200万円以下は貧困家庭とする貧困家庭が莫大に増えた。これにより生まれたのは肥満と失業。
肥満について。アメリカはコーンでできている。この意味は後で話すとしてアメリカのファーストフードを見たことがあるか?顔よりでかいバーガーに水筒サイズのソーダ、ギットギトのフレンチフライ。しかもこれで5ドルとかだったりする。例えばバーガーを食べたとして、ソーダを飲んだとして、フライを食ったとして、どれを食べても君は同時にコーンを食っていることになる。ソーダにコーンなんて入ってないし、ましてやポテトはイモだろ?と思うかもしれない。しかしコーンを食ってる。
アメリカの農家のほとんどはトウモロコシ農家だ。中部に行ってみれば分かるが延々トウモロコシ畑が広がっている。誰がこんなに食うんだよと思ったが7割は牛の飼料となる。コーンを食う牛は牧草の2倍早く成長する。しかし牛の胃は穀物を食うためにできてないので薬漬にする。牛はどんどん育つからハンバーガーのパテは安く売られる。映画ファーストフードネイションを見るとベクトルは違うがハンバーガーの秘密を知れる。残りの3割のコーンは我々用だ。しかしそのままは食えない。どうするかというとコーンシロップやコーン油になる。コーンシロップは砂糖より安価で手に入るがコレステロール値だったり様々な弊害をもたらす。ソーダにもコーンシロップは入っている。コーン油はフレンチフライを揚げるように使う。
このようにファストフードを安価で食うアメリカ人は無意識にコーンを食い、また普通よりカロリーが高いために成人の3割がスーパーファットとなるわけだ。
子供のうちから良い物を食わせればいいと思うが公立の小学校にはスナック菓子会社がスポンサーとしてつく代わりに校内にスナック菓子を売る自販機を設けるために子供のうちから肥満体質は出来上がっていく。
しかしこれもすべて雇用がないからいけないのだ。じゃあどこかで働けばいいと言えど、町にある小売店はほとんど潰れた。WALLMARTがバンバン建つからだ。WALLMARTの商品は東南アジアや中国などで時給40円くらいの賃金で作らせアメリカで売るためむちゃくちゃ安い。当然周りの小売店は価格競争に勝てず潰れていく。それはまるで爆撃を受ける町のようだ。そして潰れた小売店の店長は仕方がなくWALLMARTで働くことにするがその実態を知ることになる。年収は200万以下、医療保険は正社員にしかなく、しかも保険が必要なさそうな若者を多くとる。これではいくらモノが安くても経済は循環なのだから周りが死滅していくのは時間の問題だ。ワタミよりたちが悪い。恐るべきはウォールマートの脅威はもうすぐそこにある。SEIYUグループはウォールマート傘下だ。


幼い頃夢見ていたアメリカは憧れでしかなかった。ハリウッド、ニューヨーク、星条旗、ステーキ、スケートボード。しかしもはや輝くアメリカは過去の産物になってしまったのかもしれない。宗教、戦争、格差、差別、肥満、銃。いや、私が無知だっただけかもしれない。これらはすべて昔からあった。
おそらく明るいイメージがつきやすいのはメディアで取り上げられるアメリカはいつも東か西だからだ。NYのきらびやかさだったりカリフォルニアの穏やかさ。自由で活気のある先進国的で素敵なアメリカだ。しかしアメリカは広い。それはごく一部で、それ以外はほとんどだだっ広いトウモロコシ畑とキリスト教とファーストフードしかないと言っていいだろう。
私はオハイオ州に2度行ったが大統領選で最後の要であると言われているオハイオ州は糞田舎だった。しかし要と言われるほど人がいてそれだけ影響力があるのだから、やはり本当のアメリカは煌びやかではなく糞田舎なのだ。

話を戻そう。イラク戦争を支持した人々はこの糞田舎にあるといえることが分かった。その引き金とは?恐怖ということも分かった。このやり方が通用するのであれば政府も企業も恐怖を与え続ければいい。しかしアメリカは人種のるつぼ。WASP(ホワイトアングロサクソンプロテスタント)だけではない。現にあと何十年もすれば白人よりもヒスパニックのが多くなっているそうだ。オバマが選出されたこともWASPの地位が危うくなっていることを表しているだろう。ということはアメリカを支える人々は白人ではなくその他がほとんどになる。ならばアメリカの考え方も変わってくるのではないだろうか。日々恐怖しお互いを疑うような生活や国交ではなく、大らかで平和を好むような温厚な国になるやもわからない。あ、でもそうなると多分ハリウッド映画がつまらなくなるね。政府に対する不満が強ければ強いほど芸術は素晴らしくなるから。

0 件のコメント:

コメントを投稿